近畿計量大会

日時 平成29年11月17日(金)
場所 ホテルグランヴィア和歌山 6F
大会次第
1.開会の挨拶
  和歌山県計量協会 会長 畑山忠徳
    
2.来賓の挨拶
  経済産業省産業技術環境局  室長 吉岡 勝彦
   計量の普及・啓蒙
   11月は、計量強調月間
   地域の計量、子供の姿が印象的

  和歌山県副知事  下 宏
    制度見直し
    議論や交流は、大切
        
3. 近畿計量協議会会長感謝状贈呈
    中井正幸 和歌山県計量協会副会長
       
4.記念講演Ⅰ
   「キログラムの定義改訂がもたらす新しい質量計測技術について」 
                     産業技術総合研究所 工学計測標準研究部門  主席研究員 藤井 賢一
 
  国際単位系(SI)は、長さ、質量、時間、電流、温度、光度、物質量に対応する7つの基本単位
    (m、kg、s、A、K、cd、mol)とその組立単位などからなる世界共通の単位系であり、
  その始まりは近代度量衡の礎となる1875年のメートル条約の成立にまでさかのぼることができる。

  ①.単位の実現方法
    ・時間:秒(S)
      セシウムの超微細準位間の放射の周期の9192631770倍
    ・長さ:メートル(m)
      1/299 792 458秒間に光が真空中に伝わる工程の長さ
    ・温度:ケルビン (K)
      水の三重点における熱力学温度の1/273.16
    ・電圧:ボルト(V)
      ジョセフソン電圧:Vn=nfh/2e
    ・抵抗:オーム(Ω)
      量子化ホール抵抗 
    ・質量:キログラム(kg)
      国際キログラム原器の質量

  ②現在の定義:国際キログラム原器(IPK)


   ③キログラム原器の定義改定案
     誕生から120 年以上経過した現在も、世界に一つしかない国際キログラム原器が基準として用いられている。
     国際キログラム原器はパリ郊外にある国際度量衡局(BIPM)に保管され、
     世界の質量標準は国際キログラム原器との定期的な校正によって値付けされた各国のキログラム原器との
     比較の連鎖によって維持・管理されている。
     しかし、表面汚染や損耗などの影響により、国際キログラム原器の質量の長期安定性は
     50 μg 程度であると推定されている。
     1 kg に対して相対的に5×10-8のわずかな変動幅に相当するが、近年の計測技術の進展においては
     無視しえない大きさとなりつつあり、キログラムの定義もメートルのようにその基準を基礎物理定数へ
     と移行させることが国際度量衡委員会(CIPM)などで検討されてきた。
     原子の数から質量を決めるアボガドロ定数に基づくもののほかにも、相対論と光電効果から光子の
     エネルギーと質量を関連づけるプランク定数に基づくものが検討されている。
     このため、この2つの定数を国際キログラム原器の長期安定性(5×10^-8)を上回る精度で決定することが
     キログラムの再定義のために切望されていた。
     ・再定義例(1)
       キログラムは基底状態にある静止した自由な5.018 ・ ・ ・ ×10^25 個の炭素原子12Cの質量に等しい
        アボガドロ定数NA = 6.022 ・ ・ ・ × 10^23 /mol
     ・再定義例(2)
       アインシュタインの関係式
       E = mc2 = hν
       ν= mc2/h
       キログラムは周波数が[(299 792 458)^2/6.626 ・ ・ ・ ] ×10^34 ヘルツの光子のエネルギーと
       等価な物体の質量である。
       光速度c = 299 792 458 m/s (定義)
       プランク定数h = 6.626 ・ ・ ・ ×10^ー34 J s

    ④新しい定義がもたらすもの
      キログラムの定義を改定するためには,国際キログラム原器の質量の長期安定性を超える精度で、
      プランク定数を測定することが必要である.
      従来はワットバランス法と呼ばれる電気的な方法だけがこの精度を超えることに成功していた。
      プランク定数はアボガドロ定数からも精度よく導くことができるので,従来はX 線結晶密度法と
      呼ばれる結晶を用いる方法でアボガドロ定数が測定されてきた。

      ・アボガドロ定数の測定方法・・・・<X線結晶密度法>



       自然同位体比のシリコン結晶が用いられていたので,その同位体比の測定精度に限界があり、
       国際キログラム原器の質量安定性を超える精度でアボガドロ定数を測ることができなかった。
     ・アボガドロ国際プロジェクト
       共同研究期間:2004-2017
       シリコン同位体濃縮
              自然界のSi     同位体濃縮Si
         28Si      92%         99.994 %
           29Si      5 %         0.005 %
           30Si      3 %         0.001 %
        ΔM/M  1 ×10^ー7       1 ×10^ー8

        BIPM(国際度量衡局), INRIM (伊), IRMM (EU), NIST(米), NMIA (豪), NMIJ (日),NPL (英),
        and PTB (独)

        目標:
              ΔNA/NA = 2× 10^ー8











     ・キログラムの定義改訂に関するCCMの四つの条件
      R1:Consisitency
         異なる測定原理で測定した3つ以上の独立した結果が相対標準不確かさ。
             50μg/kgで整合
      R2:Uncertainty
         その内の一つは、20μg/kgよりも小さいこと。
      R3:Traceability
         最新の校正によって、国際キログラム原器へのトレーサビリティが確保されたデータであること。
      R4:Validation
         共通のプランク定数から実現されたキログラムが整合あいていることを
         Pilot Studyによって検証。


      プランク定数の測定結果(2015年)
       Extraordinary CalibrationによってIPKへのトレーサビリティが確保された状態での測定結果




     ・キログラムの実現に関するCCMのPilot Study(2016-2017)
       ⅰ Extraordinary CalibrationによってIPKへのトレーサビリティが確保されたNMIが
          共通のプランク定数(CODATA 2014年の推奨値)を使ってキログラムを実現
       ⅱ 各NMIが値付けた分銅をBIPMに輸送して短期間に一斉比較
       ⅲ 日、米、加、独が実現したキログラムが高い精度で整合:±10μg/kg

     ・NMIJにおけるキログラムの実現



      ・新しい定義に基づくキログラムの実現方法







    ⑤キログラムの定義改定がもたらすもの
     ・メートルが光速度cで定義され、光周波数さえ測れれば誰もが長さの単位を実現できるようになった様に、
      プランク定数hやアボガドロ定数NAを基準として誰もがキログラムを実現することできるようになる。
     ・新しい質量の定義⇒ 微小質量計測技術へ応用
              

       ・電圧天びんによる微小質量計測技術の開発(1 ng~1 mg)



        ・分銅による校正が不要な天びんの開発も進む
        ・インクジェット技術によるセンサ開発
         吐出量(1pL)の微細化・均一化→MEMSセンサーの製造・評価
         「微少質量が測れないから造れない」と云うジレンマを解消
          ニーズ:液滴1PL(Φ10μg液滴)≒1ngオーダー
          0.1ngレベルの最小表示で測定

   ⑥キログラムの将来
.     1889年に国際キログラム原器(IPK)が質量の単位として定義されて以来、
     ようやくアボガドロ定数やプランク定数の測定精度のほうがIPKの質量安定性よりもよくなってきた。
     実現すれば130年ぶりの大改定
.     キログラム、アンペア、ケルビン、モルの定義を改定するかどうかが・・・
     2018年に開催されるメートル条約の総会で審議される。
.     物理量の基準が、人間の五感で感じられる大きさから、ミクロな量へとシフトする。
     物理量のパラダイムシフト. 基礎物理定数にもとづくSIの新しい定義は計測技術の更なる
     発展をもたらすだろう

5.記念演題Ⅱ
    経済産業省技術環境局  計量行政室  室長補佐 田中 睦
 
 「計量制度の見直しー政省令改正の概要」
  ①計量制度見直しの検討スケジュール
  ②改正の概要
     ・従来より検定を行っている質量計に於いて自動はかりも新たに検定を実施



      









6.特別講演
  映画監督 大阪芸術大学 教授  田中 光敏 
  演題
  「エルトゥールル号と和歌山」
   大阪芸術大学で同窓生だった田中光敏氏(串本町長)から、エルトゥールル号遭難事件の凄い資料が
   出てきたので、映画に出来ないか?との熱いオファを受けた。映画化10年前の話である。
   それからいろいろな資料を調べ、さらに数回トルコを訪問し先方と合作を提案したが、
   なかなか話が前進しない・・・このまま座礁か???
   


  北海道にいる時、NHKニュースを見て下さい???との連絡が入った。
  見ると、「安倍首相とエルドアン・トルコ共和国大統領が、日本・トルコ友好に
          エルトゥールル号の映画化を決定」

  「良い結果は、準備次第」
   すべてを想定して準備を整える ・・・大抵のことは成功する
   良い原因には良い結果、悪い原因には悪い結果
  




  ・日本から遙かに遠いこのトルコの人に、「好きな国は?」と尋ねると、「日本!!!」と答える人が多いと云う。
    その友好の原点は、本州最南端・和歌山県串本町・住民が座礁した乗り組み員の救出に
    献身的な活動をした事を、小学校の教科書で教えてもらったとのこと。
    逆に日本人は、この事を知らない人が多い。
  ・日本人がどの様にトルコの人を救ったのか?
    あえて、映画では、「心」を伝えようと思った。 
    目の前に、助けを求めている人が、それを感じて、心を込めて行動する。
    エルトゥールル号海難事故の撮影には、トルコ人遭難者の救助に加わった串本町民の子孫が
    エキストラで出演してもらった。また、トルコの出演者の方が、串本方面で道を間違い、うろうろして
    いると、必ずほど、車で宿舎まで送り届けてくれる。トルコ人にとっては、びっくり!!!
    「まごころ」・・・実話の根幹があるのは、日本とトルコが世界に示すことができる。
    平和宣言のようなものだと思う。
  ・「本気なら言葉に出して言いましょう」
    口から出た言葉は、実現していく。また、それに向かって周りにいる人たちが夢物語でなく、
    現実のものとして言ってくれる。だから言葉を大切にしよう。
    心を込めて声を発することで、名もない人がエネルギーを発した時、歴史は動く!!!
    →平和へ繋いで行く。
  ・「雨を喜ぶ」・・・心の余裕
    雨を降ったと言っては嘆き、寒いと言っては、不平不満・・・
    夏の暑さも気に入らない。いったいどうあれば良いのか?
    不満がいつしか習慣になっている人が多い。
    こんな習慣は早くやめた方がよい。
    大自然の立場に立つ・・悩みも苦しみも、自分の器が小さいから過敏に感じる。
  ・「伝説に弱者あり」
    これは平和へ繋ぐべき、今の時代だからこそ必要な観点です。
  ・「理屈抜きにまず動いてみる」
    リハーサルの時から本番さながら・・・
    何回も何回も動くことにより、動いて初めて解ることもある。
    →検証→修正
  ・「迷うなら行動してみよう」・・・行動すれば必ず結果が出る。
    一歩を踏み出さなければ何も始まらない。
  ・「積み重なる力は、奇跡を起こす」「決してあきらめないこと」
    もう少し、セットを大きくしたい・・・予算が?・・・
    台風が来て、上流から大量の流木が流れてきた・・・
    多種類の材木が流れてきたので、天の恵みと、無料で拝借して、セットに活用できた。
  ・テヘラン邦人救出には邦人救出に向かったトルコ航空の客室乗務員の娘が客室乗務員役として、
    出演している。トルコの人たちもエキストラで多数出演してもらい「恩返し」ではなく、
    →「目の前に困っている人があれば、助ける」
  ・映画は、1600のカットで出来ているが、すべてみんなの力を借りた「積み重ね」
  

7.懇親会
   

 
  マジック、山原さん特別参加  ↓


   



  
                          計量のHP