平成24年6月度例会


日時 :H24年6月1日 PM13:30〜16:30
場所 :大阪弥生会館 三笠

T.会務報告
  会長から開催された報告がなされた。
  また、会員の移動報告(A会員91名、B会員54名、賛助会員4)
  
U.議演@
  「放射能測定の基本と食品の放射能測定について」
      鞄津テクノリサーチ 環境・食品本部  山川和彦
  1.放射線と放射能    
    ・放射線:
         物質を通過する時、物質中の原子や分子に作用して電離する能力を持つ電離放射線
         α線:He(2/4)原子核が飛び出る。
             RAー226 → Rnー222 + He(2/4)
             U-235   →(注)
         β線:陽電子または電子が飛び出る
         γ線:原子核からα線、β線が出た後、残ったエネルギー準位の遷移で電磁波の形で出る。
          X線:γ線と同じ電磁波だが、原子核からでなく、軌道電子の遷移からでる。
        中性子:原子核の中の中性子が飛びだす。
    (注) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
   ウランU235の壊変を示す
   ウラン238(半減期45億年)→α崩壊・トリウム234(24日)→β崩壊・プロトアクチニウム234(1.2分)
   →β崩壊・ウラン234(25万年)→α崩壊・トリウム230(8万年)→α崩壊・ラジウム226(1600年)→
   →α崩壊・ラドン222(3.8日)→α崩壊・ポロニウム218(3分)→α崩壊・鉛214(27分)→β崩壊・ビスマス214(20分)
   →β崩壊・ポロニウム214(0.00016秒)→α崩壊・鉛210(22年)→β崩壊・ビスマス210(5日)→
   →β崩壊・ポロニウム210(138日)→α崩壊・鉛206(安定)
   しかし、原子炉では、中性子を与えて核分裂が起きる。
     U(235/92) + n -> Y(95/39) + I(139/53) + 2n
     U(238/92) + n -> U(239/92) -> β崩壊・> β崩壊・> Pu239

    ・放射能:
         @原子核が放射線を出して、別の原子核になる性質(能力)
         A放射性壊変の強度ベクレル
           壊変で放出される高速の粒子や高いエネルギィーを持つ電磁波
  2.放射線物質
    ・天然放射性物質
      自然界に存在する元素
       C−14(5730年),K−40(13億年)、Uー235(7億年)、U−238(45億年)
    ・人工放射性物質
      原子炉内で生成する核分裂生成物や炉材に、中性子が照射されて生成する放射化生成物
       Coー60(5.3年)、Krー85(10.7年)、Srー90(28年)、Iー131(8日)、
       Cs−137(30年)、Cs−136(13日)、Cs−134(2.1年)
    ・CsとI
      安定同位体      Cs−133 
      放射線同位体    Cs−137(30年)、Cs−136(13日)、Cs−134(2.1年)

      安定同位体      I−127 
      放射線同位体    I−131(8日)
                   甲状腺に影響
   ・身の回りの放射線
      自然放射線被曝線量(2.4mSV/年)
         宇宙から0.4 大地から 0.5
         食物から0.2 大気から 1.3
      人工放射線被曝線量
         胸のX線検診 0.05
         胃のX線検診 0.6
         胸部X線CT  6.9
   ・人体への影響
      <確定的影響>
      急性障害  :吐き気、皮膚の紅斑、脱毛、不妊
      胎児の障害:精神遅滞
      晩発性障害:白内障、
      <確率的影響>
      晩発性障害:がん、白血病
      遺伝的障害:
   ・原子力発電と原子爆弾の違い
      原子力発電  U238>U235
      U235の純度を上げて、核分裂連鎖反応を起こすには濃縮度3-5%がもっともよい。
      原子爆弾   U238<U235
      U235の純度は、90%以上
   ・測定単位
      Bq(ベクレル):放射線の強さ
      Gr(グレイ)  :放射線が物質に照射された時、エネルギーの吸収量(吸収線量)
      Sv(シーベルト):放射能を浴びた時の人体への影響(実行線量)
                 等価線量=吸収線量×放射線荷重係数
                               (α線=20,β線、γ線=1)
               実効線量がある。
      (旧)
      レントゲン :照射線量
      ラド     :吸収線量(1グレイ=100ラド)
      レム(rem):人体への影響度(被曝量もしくは線量当量)
                    0.01シーベルト=1レム
    ・測定機器
     気体の電離作用を利用する方法 
      電離箱、GM計数管、比例計数管
     蛍光作用を利用する方法
      シンチレーション検出器、熱ルミネンス線量計、蛍光ガラス線量計、光刺激蛍光線量計
     写真作用
      フイルムバッジ
     個体の電離作用
      半導体検出器
   ・食品の放射能測定
     試料調整
        ↓前処理1(飲料水)、前処理2(魚類)、前処理3(野菜・海草類)
     容器に試料充填
        ↓
     重量・容量の測定
        ↓
     γ線スペクトロメトリー
         放射線(α線、β線、γ線、中性子)の線束とエネルギーを測定し、核種を同定するとともに、
         その定量する。
   ・福島第一原子力発電所爆発を受けて (原発事故政府中間報告:H23.12.27)
     事故の経過(1、2,3,4,号機及び全体)
     3月11日
      東京電力福島第1原子力発電所の核燃料冷却装置が破損
      核燃料がメルトダウン→水とZrが反応 水素爆発
      空焚き→溶融→メルトスルー
     3月12日
      東電 正門濃度 12Sv、西門濃度 2400μSv、
      高さ方向が不明、西方向に飛散
     3月14日
      浪江地区が70μSvとなり、浜通りは遅くに濃度が高くなっている
     3月15日
      2号機の爆発が9時頃で爆発時は、東北の風が弱く、発電所の南西側の濃度が上昇したが、14時ごろから
      17時頃には、東〜南西方向に風向きがかわり、17〜18時に発生源の真西に汚染源が移動し、
      その後は南西の風となったため、北東方向に移動した。
   ・ストロンチウムSrー90の分析上の問題点
   ・セシウムCs-137の影響
   ・福島原発電事故のモニタリングの問題点
     福島県内では、大気ダストが短時間採取
     検出下限値の設定が高く、検出限界以下が多く、数値が無く連続測定になってない。
     大気ダストは、採取されたが降下物は、福島市のみだった。
     福島県内に、大気ダスト連続採取地点や降下物採取地点を設ける必要があった。
   ・計測の問題点
     放射能プリュームが通過した地域では、放射能汚染により、放射能測定器(ゲルマニウム半導体検出器)が
     汚染され、放射能計測に支障がでた。
     事故時に、短寿命核種による多くのγ線ピークが見られ、核種同定には注意が必要であった。 
     測定の品質規格が統一されてない
     今度、データーの一元化が必要である。
  暫定基準値
    @食品衛生法の規定に基づく食品の放射性物質に関する暫定規制値(Bq/kg)
       放射性ヨウ素(I131) 飲料水、牛乳、乳製品   300
                     野菜、魚介類       2,000  
       放射性セシウム    飲料水、牛乳、乳製品   200
                     野菜、魚介類         500  
                                   
          ↓
        射性セシウム    一般食品            100
                     乳児用食品           50
                    、牛乳、乳製品          50
                     飲料水              10 
  議演A
  「食品の水分測定について」
      鞄津製作所     分析計測事業部 針谷哲三