水俣条約を踏まえた水銀廃棄物対策

水俣条約に関して、今年から施行されのともない、説明会が開催された。
1.水銀に関する水俣条約
 意義
 ○ 先進国と途上国が協力して、水銀の供給、使用、排出、廃棄等の各段階で総合的な対策を世界的に
   取り組むことにより、水銀の人為的な排出を削減し、越境汚染をはじめとする地球的規模の水銀汚染の防止
   を目指すもの。
 ○ 世界最大の水銀利用・排出国である中国や、化学物質・廃棄物に関する条約をこれまで批准していない米国
   も積極的に交渉に参加。
   このように多くの国の参加を確保しつつ、その中で水銀のリスクを最大限削減できる内容の条約に合意できた。
 ○“Minamata Convention“の命名は、水俣病と同様の健康被害や環境破壊を繰り返してはならないとの決意と、
   こうした問題に直面している国々の関係者が対策に取り組む意志を世界で共有する意味で有意義。
   また、水俣病の教訓や経験を世界に伝えるとともに、今の水俣市の姿を内外にアピールできる。



 2.水俣条約を踏まえた国内対策
    ①環境大臣から中央環境審議会に対する詰問
     


  ②水銀汚染防止法の概要
  
   水銀による環境汚染の防止に関する法律
    第1章 総則(第1条・第2条)
    第2章 水銀等による環境の汚染の防止に関する計画(第3条)
    第3章 水銀の掘採の禁止(第4条)
    第4章 水銀使用製品に関する製造等に関する処置第(第5条~18条)
         ・条約附属書Aに規定される製品を「特定水銀使用製品」として、組み込みを含めて原則製造禁止
          条約の認める除外規定に該当するものに限って例外的に許可
         ・優れた水銀代替・低減技術を有する我が国は、世界の水銀対策をリードする観点から、
          特定水銀使用の指定に当たっては、製品毎に条約で規定される水銀含有量の深堀、
          廃止期限の前倒しを措置
         ・条約担保のため、把握されていない新たな用途のための水銀使用製品の製造・販売を
          原則禁止し、自主評価等に基づく例外的な製造を認める
         ・水銀使用製品の適正な回収のための国、自治体、事業者の努力責務


      第5章 水銀等を使用する製造工程に関する措置(第19条)
      第6章 水銀等を使用する方法による金の採取の禁止(第20条)
      第7章 水銀等の貯蔵等に関する措置(第21条・22条)
      第8章 水銀含有再生資源の管理に関する措置(第23条・24条)
      第9章 雑則(第25条~30条)
      第10章 罰則(第31条~35条)
3.水銀廃棄物対策
  ①我が国における水銀廃棄物の発生状況


  ②廃金属水銀等及び水銀汚染物の処理のあり方
    ・廃金属水銀等の処理
      新たに特別管理廃棄物に指定
      金属水銀を安全に埋め立て処分するための基準(硫化・固形化)を追加
    ・水銀汚染物の処理
      水銀含有等産業廃棄物
      特定の施設から排出される高濃度の水銀汚染物の水銀回収の義務付け
    ・一般廃棄物(水銀使用廃製品)処理
    ・産業廃棄物(水銀使用廃製品)処理
     「水銀含有等産業廃棄物」指定
      収集運搬時
       破損しやすい計測機器・照明機器のほかの廃棄物との混合禁止、破損することがないよう留意
      中間処理時
       選別、破砕、切断時の大気への飛散防止
       金属水銀を含有する計測機器等は、水銀回収の義務づけ
       その他の製品は水銀回収の促進
      最終処分時
       安定型処分場への埋め立て禁止
       不溶化等の処理
4.水銀血圧計等の回収促進
  ①水銀による環境汚染防止に関する法律案に対する付帯決議
   (平成27年5月22日衆議院環境委員会) 
   退蔵されている水銀血圧計及び水銀体温計については、将来的な不適正処理のリスクを低減するため
   短期間に集中的に回収・処分していくことが望ましいことから、市町村及び事業者団体等と連携し効率的
   に回収等を行うスキームを早期に構築、実施すること。  
  ②水銀使用製品の生産量と処理状況
    医療用計測機器    年間 1.9t(使用または退蔵量)
  ③水銀血圧計・体温計の回収促進
  ④マニュアル策定

     
5.医療機関に退蔵されている水銀血圧計等回収マニュアル
   医師会等関係団体が水銀血圧計の回収事業に取り組む際に参考とすることで、水銀血圧計の回収促進
   が図られることを目的して、まとめられたもの
  ①ある程度の量をまとめて回収することで収集運搬・処分費を抑えることができる
  ②医療機関から回収拠点まで遠い場合は、水銀血圧計の持参が困難になる


  ③排出事業者責任
    各医療機関が水銀血圧計(産業廃棄物)の排出事業者としての責任を有する。
    3条第1項
     事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。
   11条第1項
     事業者は、その産業廃棄物を自ら処理しなければならない。
   12条第7項
     事業者は、前二項の規定によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、
     当該産業廃棄物の処理の状況に関する確認を行い、当該産業廃棄物について発生から最終処分が
     終了するまでの一連の処理の行程における処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように
     努めなければならない。