中医学研究会(H22.08.29) T.病因(病邪)弁証について 黄 先生 病因とは、疾病を引き起こす原因で、人体の生理機能を破壊し病気を発生させる素因や条件は、 すべて病因に属す。 その中の病邪は、主な病因である。 「審証求因」は、 中医学独特な病気を診断する方法で、主に病邪が体内に侵入して引き起こされる病気の症状特徴に によって、病因を求める方法である。 中医学による原因の認識は、病を起こす客観的な素因を理解する他に、疾病の症状を分析して、 病因を推測してから治療に用いる薬を決めるが、 どういう病因が繋がっているのか経験の積み重ねが必要である。 1.六気と六淫 @自然界の気象現象の特徴を 風・寒・暑・湿・燥・火を「六気」とし、 その過不足、すなわち異常な気候現象は、疾病発生の重要な原因で「六淫」とする。 六淫致病(ろくいんちびょう:六淫が病を起こす) 春の季節は、風の病 夏は暑 長夏・初秋は湿 晩秋は燥 冬は寒 この他に湿地に長く生活すると湿 高温の場所に居ると燥熱、火邪となる。 A精神情緒活動 喜・怒・憂・思・悲・恐・驚を「七情」とし、 過度の精神刺激、あるいは興奮したり抑制されたりすると、人体の陰陽臓腑機能の失調を引き起こして 発病する。これを内傷七情とする。 B労逸 労とは過労(筋肉疲労・精神疲労・房事過多)、逸とは安逸を指し(長く寝ると気は損傷される) 過度の疲れと過度の休憩の二面を含む。 C病理産物 痰飲やお血など病的代謝産物の事をさす。 2.外因(外感六淫) ・風邪(陽邪) 風は春の主気しかし、四季を通じて見られる。 急性の病気・発病早い・変化する。外感病の初期によくみられる。 @風は百病のもとである。 風邪は六淫の中で先導となり、主要な致病要因 A風は陽邪 性質は開泄で、陽位(頭部)を侵しやすい。 風性軽揚(頭部・肺経・肌膚を犯すことが多い) 上部を侵しやすい→くしゃみ・鼻水 表面→汗が出やすい・軽い B風勝則動(風勝つときは則ち動) 風邪は、善行・数編(病位がよく動く・病症がよく変わる) 皮膚の痒みや発疹が突然起こり、また消えてしまう。症状が一定しない。 C風は、動揺振転の性質 めまい(眩暈)・震せん・手足の蠕動・昏倒・硬直・ひきつけ等の痙攣や動きを 伴なう 風邪→肺(宣発・粛降作用)異常→水分代謝が悪くなる→痰や飲(水っぽい痰)が出たり、 ↑治薬 水が皮下に溢れて浮腫 虚風(マオウ) ・寒邪(陰邪) 寒は陰邪で、陽気を損傷し易い、寒性は、凝滞、収引、疼痛証を引き起こしやすい。 <臨床> 冷え、疼痛が酷。悪寒無汗、関節拘縮 @寒は陰邪、陽気を損傷 冷たい物を飲んだり・食べたりすると A寒は凝滞の性質がある 通則不痛(通らざればすなわち痛む) 急に寒くなると血のめぐりが悪く頭痛や関節が痛くなる。 「寒邪は、経絡に侵入、滞り流れない。脈の外に侵入すれば、血が少なくなる。脈の中に侵入なら 気が通じない。直ぐに痛みが生じる」 B寒は吸引の性質をもつ 吸引とは、収縮牽引の意味で、寒邪は、人体を侵し、気機を収斂させ、経絡・金脈を 収縮・痙攣させる。 C寒は清澄の性質をもつ 「諸病水液、澄みきって清冷のものは皆寒に属す」 カゼの鼻水がネバネバでなく清い水の様や痰が薄い様で有ればで有れば「風寒」 ・暑邪(しょじゃ) 暑は夏の主気であり、暑邪によって起こる病には、はっきりした季節性がある。 暑邪による発病の特徴は炎熱(えんねつ)と挟湿(きょうしつ) @暑は陽邪、炎熱の性質がある 暑病には熱象がみられ、顔が赤くなり、高熱、汗が出やすい。 A暑は昇散の性質があり、気・津を消耗しやすい。 水分が蒸発させられ(のどが渇く)→気消沈→ダルイ B湿を伴いやすい 夏は炎熱で蒸し暑いので、暑邪によって起こる病は湿邪を伴う ・湿邪(しつじゃ) 湿は長夏梅雨の主気。 湿気の多い環境にさらされると、胸悶してすっきりせず疲労倦怠を感じるようになる。 湿邪には湿気、粘滞、重濁、固着などという特性がある。 @湿は陰邪、気機を阻害しやすい<脾胃の陽気を損傷> 脾は運化の主要な臓器であり、その性質は燥を好み湿を嫌う。 そのため外感の湿邪が体内に滞留すると、まず脾が疲れ、脾陽不振になり、 運化の力がなく水湿停留となる 湿の症は、よく軟便と下痢を繰り返す。甚だしい場合は、浮腫になる 消化系が弱い:胃がもたれる A湿は重濁・粘滞の性質がある 湿邪は気の活動を阻害し易く、頭が重く何かに包まれている感じ。 また、濁は汚く濁る事であり、多くは分泌物が濁る事。(目やに・小便の濁りなど) 粘滞(ねんたい) 粘は粘着であり、滞は停滞 その性質は粘滞で固着し、一般に病程は比較的長く、膠着して治癒しにくい 湿痒、湿疹、室温病 B湿は体の下部を侵しやすい。 「風に傷らるる者、上に先ず之を受く。湿に傷らるる者、下に先ず之を受く」 ・燥邪(そうじゃ) 燥は湿と相対するもので、秋の主気である。 「燥勝てば則ち乾く」 燥邪に外感するのは秋季の乾燥した季節に多い。 @燥には乾燥性があり、津液を損傷しやすい。 乾くので鼻水が出ない・咳が有っても痰が出ない。かさかさで保湿機能がない。 A肺の損傷 肺は潤いを好み燥を嫌う 肺は気を主り、呼吸を司る ・熱(火)邪 熱は夏の主気あり、火と熱は程度が異なるだけで性質は同じ。ともに炎上と急迫の特性を もっている。 したがって火邪による病は発病が急で変化も速い。熱が多いと血の中に籠もる 「陽勝則熱、陰勝則寒」 陽の性質を持つ邪気による病の多くは熱証であり、陰の性質を持つ邪気による病の多くは 寒証である。 @熱は陽邪、炎上の性質あり、気・津を損傷しやすい 陽が強いと熱になり、人体を損傷すると高熱・悪熱・煩渇(はんかつ)・汗出等の症状が見られる。 火熱陽邪は炎上のため人体の上部(顔面)に表れやすい。また正気を損傷させ全身の津・気が 衰える。 A熱は生風、動血の性質 熱極生風 熱が肝経を焼いて津液が煮られ、筋脈の潤いが失われて肝風( 痙攣 ) を誘発。 手足が抽?し頭頚部が強直し角弓反脹、両目が上を向く・牙関緊閉など筋脈の痙攣が起こる。 また、ひどい場合は、出血(破れて外に出る)吐血・鼻血して、熱が下がる B熱は蒼瘍(そうよう)を形成する 心経火熱 加熱の邪は血分に入り局部に集まり血肉を腐食し、よう腫を発生させる。 吹き出物から膿が出るように!! ・疫癘(えきれい) 伝染病を有する病邪 高熱を伴う 3.内因(内傷性発病因子) ・内傷七情 @情志による病は五臓を損傷する 「悲哀愁憂すれば則ち心動き、心動けば則ち五臓六腑皆揺らぐ」 A情志の変動は気の機能活動に影響する 「百病は気より生ずるなり。怒れば気は上逆し、喜べば気は緩み、悲しめば気は消沈す、 恐れれば気は下り、寒すれば気は収斂し、熱を受ければ気は外泄し、驚けば気は混乱し、 過労になれば気は耗散し、思慮すれば気は鬱結する」 喜:心情愉快…意気調和・営衛調和 ・心 怒:憤慨 ・肝 憂:苦慮・愁い・悶々として悩む状態 ・肺 思:精神集中して知恵をめぐらせている状態 ・脾 悲:精神が抑制され、悩む、哀痛な情緒 ・肺 恐:突然の危難により驚き恐れる状態 ・腎 驚:急な異常体験による神経の突発性緊張 ・腎 ・内傷五邪 身体の陰陽失調によって生じた内風・内寒・内湿・内燥・内熱 ・飲食不節 食べ過ぎは脾胃を痛め食積を形成し、肥甘厚味の過食や飲酒の過度は湿熱を発生させる。 また、辛味の過食は胃熱を発生して陰液を消耗し、反対に生冷の過食は、脾陽を障害して 寒湿を内生させる。 4.不内外因 ・労傷 ・痰飲 痰飲とは、水液代謝や運化障害によって生じた病理産物が引き起こした病症の総称 (狭義)4飲の一つ。腸間に水液が停滞している症候 痰飲は痰と飲とに区別され、粘稠で混濁な物を「痰」と呼び、希薄な物を「飲」と呼んでいる。 原因としては、肺・脾・腎・三焦などと関係しており、水液代謝に関与する臓腑経絡が障害 されると、痰飲が発生。
・淤血(おけつ) 血液の運行が悪い、あるいは血管から血が溢出して消散しないなどの原因で、臓腑や経絡内に 停滞し、および経脈から離れて滞留した血液。 気血の運行が悪くなるとさまざまな疾病が生じる。 2.文山の田七人参 吉井 先生 |