平成22年 夏期 薬事講習会
日時 平成22年8月17日 PM1:00〜3:30
場所 万葉ホール

身近な関節炎「痛風・関節リウマチ」   ひがみ病院 樋上聡美

 通風とは、「風が吹いても痛い」と言われているが、痛みの発作という意味。
 その原因は、高尿酸血症(血液中の尿酸が多い状態)
 ・高尿酸血症
  血清尿酸値が7.0mg/dlを越えるもの
  尿酸塩の結晶が関節内に沈着し、体の防御機構が働いて関節炎が起こる。
  <危険度>
   通風関節炎・痛風結節 9mg以上/dlで20%の発生率
   腎障害
   尿路結石 
   メタボリックシンドローム
   高血圧・心血管疾患
 ・尿酸
  プリン体で、細胞や食品(肉・魚介・ビール等)に含まれる。
  乾燥された煮物に多い。
  肝臓で尿酸に代謝され、その後、腎臓で老廃物として濾過され尿になる。
  
  日本は、痛風が無い社会だったが、戦後食事が欧米化されて多くなった。
  現在、成人男性の高尿酸血症の頻度は、30歳以上で30%
  痛風の有病率は、1%を越えている。

 ・痛風発作の診断 
  1. 症状が出てから1日以内にピ−クに達する
  2. 以前にも同じような症状があった
  3. ひとつの関節だけに症状がある
  4. 関節の部位が赤くなる
  5. 関節が腫れている
  6. 足の親ゆびの付け根の関節に激痛、腫れがある
  7. 片足の親ゆびの付け根の関節に炎症がある
  8. 片足の足首の周りの関節の炎症がある
  9. 血液検査で尿酸値が高い

   この9つの項目の6つ以上あてはまれば痛風である可能性が95%
   
  ・治療
   1.応急処置:患部を心臓より高い位置に保ち、冷やすと痛みは、改善
   2.発作の前兆が有る時は、コルヒチンを直ぐに1錠だけ内服して、発作を防ぐ
   3..発作になってしまったら:非ステロイド性消炎鎮痛剤を内服
   4.上記が効かない時は、ブレドニゾロ30〜50mgで開始し、徐々に減量
   5.直ぐに尿酸降下薬の投与を開始してはいけない。

  ・食品と痛風発作との関連
   高尿酸血症の人は尿が酸性に傾きがちです。尿酸はもともと水に溶けにくい物質ですが、
   酸性になることでますます溶けにくくなります。
   すると尿酸の結晶が析出し、尿路結石を引き起こしやすくなります。
   乳製品を多く取る。^^ アルカリ食品(野菜)を多く取る。

   酸性食品
     肉類・魚介類・穀類・パン・そば粉
     その他:卵黄・チーズ・アスパラガス・みそ・清酒
   アルカリ食品
     野菜:大根・キャベツ・ニンジン・サツマイモ  果物:バナナ・イチゴ・リンゴ・かき
     海草:昆布・わかめ
     その他:とうふ・コーヒー・牛乳・大豆・しいたけ
     

  取りすぎると痛風発作を起こしやすい ・肉類・内臓類
・お酒
  取りすぎても痛風発作を起こしにくい ・高プリン体野菜(干しシイタケ、ひらたけ)
・高脂肪乳製品
  継続的に取ると痛風発作の予防になる ・乳製品・低脂肪乳製品
・植物性タンパク質(大豆など)

 ・薬
  尿酸排泄促進薬(腎臓の尿酸を排泄する働きをうながし、血中尿酸値を低下さる)
   尿酸排泄低下型(尿酸排泄されにくいタイプ)
    ベンズブロマロン(分泌後再吸収阻害剤)
    プロベネシド(分泌前再吸収阻害剤)、スルフィンピラゾン、ブコローム
  尿酸産生阻害薬
   尿酸産生過剰型(尿酸が作り出しやすいタイプ)
    アロプリノール、
  痛風発生停止薬
   好中球が尿酸結晶を貪食するから炎症が起こるので、その好中球の働きを抑える。
     コルヒチン
 ・ 生活指導
  @肥満の改善
  A充分な水
  Bカフェインの少ない(交感神経を活発かするので)生活
  Cアルコール制限
  D有酸素運動

 関節リウマチ 
  免疫の異常により関節の腫れや痛みを生じ、それが続くと関節の変形を来す病気
 ・診断
   @朝のこわばりが少なくとも1時間持続すること(6週間以上)
   A3つ以上の関節領域の腫脹がみられること(6週間以上)
    ヘパーデン結節(指の一番先の関節)
    ブシャール結節(指の二番目の関節)
    拇指CM関節症(親指の付け根)
   B手関節または、MP,または、PIP関節(指の第2関節)領域の腫脹がみられること
   C対称性の腫脹があること(多発性)
   D手のX線所見で異常がみられること
   E皮下結節がみられること
   Fリウマトイド因子が陽性であること
   このうち4項目以上があてはまるとき、関節リウマチと判断
   ※変形性関節炎(ヘパーデン結節に腫れ・痛み・変形の症状で、
               多くは両側性に発生)とよく間違えられる。
 ・治療
  @炎症を鎮め、関節破壊の進行を抑制して、関節の変形をさせない。
  A体の不自由さを最小限に抑え、生活の質の向上
  B寛解(リウマチの症状が完全に落ち着いて止まっている状態)を目指す
    
 ・
  @非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)
    解熱・鎮痛薬 ロキソニン ボルタレン
    <初めに中止する薬>
  A副腎皮質ステロイド薬
    痛みの改善及び免疫抑制 プレゾニゾロン、デキサメタゾン
    <関節破壊の防止は出来ないので長期使用は、ひかえる>
  B疾患修飾性抗リウマチ薬
     Dmard           ブシラミン、サラゾスルサァピリジン、
     MTX            リウマトレックス、メトレート
  C生物学的製剤
    遺伝子組み換えタンパク質で、炎症に関与するタンパク質を特異的に阻害する最新の治療薬
     ただし、現在のところ薬剤費が高い。
    ・レミケード(一般名:インフリキシマブ)  田辺三菱製薬   薬価 ¥100,285/100ml
    ・エンブレム(一般名:エタネルセプト)   ファイザー      薬価 ¥15、501/25mg
    ・アクテムラ(一般名:トシリズマブ)    中外製薬      薬価 ¥59、380/10ml
    ・ヒュミラ(一般名:アダリムマブ)      アボットジャパン  薬価 ¥71,097/0.8ml

 まとめ
  @関節リュウマチは、免疫異常による関節の炎症性疾患である。
  A関節破壊は、発症早期に進行し、生活機能を低下させる。
  B治療方法は、
   ・出来るだけ早く、MTX中心の抗リウマチ剤で治療し、寛解をめざす。
   ・抗リウマチ剤無効例には、生物学的製剤を使用する。
   ・生物学的製剤は、寛解率も高く、関節破壊を抑制する新しい治療薬。
   ・痛みや炎症を抑える薬、NSAIDやステロイド薬は、必要に応じて増減し、短期的に用いる。