平成25年 新年講習会
 日時 平成25年1月5日 PM2:00〜4:30
 場所 万葉ホール

「高齢者に多い眼の病気」   奈良県立医科大学 眼科教室科 緒方奈保子

 動物は感覚器(眼、耳、鼻)を通じて、情報を得る。
  ・犬    →鼻
  ・ウサギ →耳
  ・人間   →眼(ほとんどの外界からの情報は、眼から:視覚情報)


 角膜・水晶体は透明な組織でレンズ 
  :ピントを合わせる
 
 網膜で光を感じる
  :フイルム(映像が映る)

 視神経・脳
  :コンピューター(情報伝達と整理)








 眼の病気には、どんなものがあるか?
 1.近視・遠視・乱視・老眼
 2.結膜炎
 3.白内障
 4.ドライアイ
 5.緑内障
 6.糖尿病網膜症
 7.加齢黄班変性
 8.網膜剥離



 
 そのうち 失明の原因は、
 1.緑内障           21%
 2.糖尿病網膜症       19%
 3.網膜色素変性症      13%
 4.加齢黄班変性       9%
 5.高度近視
 6.その他

 高齢者に多い眼の病気は?
 T.白内障
 U.緑内障
 V.糖尿病網膜症
 W.加齢黄班変性


 T.白内障
  ・多くは、加齢による水晶体の混濁
  ・白髪が出るのと一緒
  ・進行予防として、点眼治療
  ・点眼しても白内障は、よくならない
  ・白内障手術を行うと、視力は回復する。ただし、他に眼の病気がないとき。
  ・あまり進行すると他の病気も引き起こしたり、手術の時、傷が大きくなる。
  ・車の運転をする人は、免許更新に必要な視力が出なくなったら、手術を考える。
 U緑内障
  網膜神経節細胞が死滅する進行性の病気で
  視神経変形と視野異常(視野欠損)をとなる。
  かっては眼圧が高いことが原因と考えられて
  いたが、眼圧が正常範囲であっても、緑内障に
  なっている患者が多いことが確認され、
  今は、視神経乳頭の脆弱性が緑内障の原因と
  考えられている。

  ・日本の失明原因の1位
  ・急性と慢性がある。
  ・眼圧が関係して視神経が障害される。
  ・日本人は、眼圧が正常の慢性緑内障が
   もっとも多い。
 急性緑内障
  眼痛・頭痛・吐き気・嘔吐・充血・視力低下・
  散瞳(中程度瞳が大きい)

   瞳孔ブロック
      ↓
   後房圧上昇により、虹彩根部上昇
      ↓
   隅角を閉鎖

 ・レーザーによる虹彩切開手術



 ・薬剤
  閉塞隅角(隅角の狭い)緑内障が対象で、解放隅角緑内障が対象は、関係ない。
 @向精神薬A催眠鎮静剤B抗パーキンソン病薬C消化性潰瘍薬D抗ヒスタミン薬
 E循環器用薬F感冒薬G眼科用薬等

    抗コリン作用、交感神経刺激作用を持つ薬剤が
      添付文章上、緑内障に禁忌
                                
           
狭隅角眼では、散瞳作用による急性緑内障発作が
起こる可能性がある。

  抗コリン作用による毛様体の弛緩により、房水(ぼうすい)流出抵抗を増大させ、眼圧を上昇させる可能性がある

 

 慢性緑内障
 ・解放隅角が多い
 ・眼圧が高い場合と正常の場合がある。
 ・初期は、検診で見つかる。
 ・徐々に視野障害が進行する
 ・進行すると失明に至る
 ・まずは、点眼治療で眼圧を下げる

   視神経の障害はゆっくりとおこり、
   視野(見える範囲)も少しずつ狭くなって
   いくため、目の異常を気付かない。  

 緑内障治療
 ・眼圧を下げる。
 ・視神経の循環をよくする。
 ・眼圧を下げると視神経が保護され、
  視野障害の進行が遅くなる。
 ・視機能を悪化させない。
  (消えた視野は、戻らない)

V.糖尿病網膜症
  自分で視力低下に気付いてない

糖尿病は、血糖値が高い状態が続くので、血管に多くの負担がかかり、血液の流れが悪くなる。
そうすると、目の中にある血管に異常が発生し、血管が膨れたり、閉塞したり、破れたりする。
そのため、網膜に栄養や酸素が届かなくなり、網膜や硝子体などに異常がでる。
              高血糖
               ↓
             血管壁障害
               ↓                 単純網膜症
           血管透過性亢進            
       ーーーーーーーーーーーーーーー
               ↓                 
           血管床閉塞(網膜虚血)       前増殖網膜症
                                           
       ーーーーーーーーーーーーーーー
               ↓
          新生血管(血管新生促進因子)
               ↓                 増殖網膜症(新生血管が生えてくれる・
                                           ひどい出血や網膜剥離))
        硝子体出血   繊維血管性増殖組織
            牽引性網膜剥離


  単純網膜症(初期)       

 血管がもろくなる血管から水漏れ

 (自覚症状がない)
 






  前増殖網膜症(進行期)

  血管が詰まって、網膜に血液が流れて
  いないところが出来る
  


  (まだ自覚症状が無いことも多い)









  増殖網膜症(重症期)

  新生血管が生えてくる
  ひどい出血や網膜剥離


  (ほぼ全域が無潅流領域)










治療
 @内科的治療→血糖コントロール(常に基本となる)
 A網膜光凝固レーザー:進行期:重症期
 B硝子体手術:重症期
 


  A網膜光凝固レーザー
   :進行期:重症期














  B硝子体手術:重症期










W.加齢黄班変性
  網膜の黄斑(おうはん)に異常な老化現象が起こり、視機能(視力や視野)が低下してくる病気
  ・真ん中が見えにくい
  ・ゆがんで見える

 @萎縮型
   黄班の網膜が栄養不足で徐々に薄くなって弱っていくタイプ
 A滲出型
   黄班にもろい血管(脈絡膜新生血管)が出来て、そこから水や血液がしみ出して、
   黄班の働きが落ちるタイプ




 ・光線力学的療法(PDT)
 @新生血管への取り込まれる薬
   光感受性物質(ベルテポルフィン)
   を静脈内投与
 A眼にレーザー光照射
 B光化学反応を起こし、新生血管が閉塞する。

 網膜の細胞を壊さないで、新生血管を抑えられる
    
 ・抗血管内皮増殖因子(抗VEGF)薬
    新生血管を萎ませて、網膜の余分な血管
    の成長を止める
 @マクジェン (ペガプタニブナトリウム)
   薬価  硝子体内注射用キット0.3mg = \123,457
    (ファイザー)
   VEGFに結合してその働きを止めてしまうが
   胃の中で分解してしまうので、眼の中に注射
 Aルセンティス(ラニズマブ)
   薬価  0.5mg=\176,235
    (ノバルティスファーマ)
 Bアイリーア(アフリベルセプト)
   薬価  0.05mL \159,289
    (バイエル薬品、参天製薬)


 早期発見の自己チェック
 @約30cm離れる
 A片目を閉じて表の中央の黒い点を見つめる
    (必ず片目ずつチェックして下さい)

 ・線がぼやけて薄暗く見えませんか?
 ・中心がゆがんで見えませんか? 
 ・線が部分的に欠けてませんか?