平成25年 夏期講習会
日時 平成25年8月17日 PM1:00〜3:30
場所 万葉ホール

 肝臓病あれこれ                                     
  〜薬剤による肝障害を含めて〜  
 
                                   (よしじ ひとし)
                           奈良県立医科大学 第三内科教室 准教授 吉治 仁志

 慢性肝炎
    肝細胞の一部が破壊されて肝臓に炎症が起こる病変を肝炎と云い、肝炎ウイルスに感染して
    起るが、薬剤やアルコールが原因になることもある。

 1.C型肝炎

 慢性肝炎の約8割の人が肝炎ウイルスを
 持っており、C型が約70%占めて多い。
 C型肝炎ウイルス(HCV)の感染によって
 肝炎を発症するするウイルス性肝炎のひとつで
 あり、肝臓の細胞が壊れて働きの悪くなる病気


 
 年齢は40歳代以上に多く、
 C型肝炎ウイルス対策が講じられる以前の
 輸血などの医療行為による感染により、
 また、高齢になるほど、陽性率が大きく
 なってきている。

         ↓









  慢性肝炎は急性肝炎に比べ症状が軽く、
  気づかないまま進行するので、
  注意が必要。







 
 治療は、
 インターフェロンの投与
 ペグインターフェロン(PEG化タンパクコート)
 は、分解されにくく、長期に渡って体の中で
 働くので、少ない投与回数で済む。
 しかし、単独では、効果が少なく、
 抗ウイルス薬(リバビリン)の併用が有効




 
  

 インターフェロンは、
 高齢の女性は、男性と較べると効きにくい。
 また、遺伝子タイプにより、
 SNPs:Single Nucleotide Polymorphisms:
  (個人間における遺伝子の違いを意味する)
 を同定して、反映させる







   
   




      
       肝線繊維化の改善が見られる
          →













 インターフェロン治療は、
 線維化が進んでないほど効果が
 高いので、早期の治療が重要








 
 現在、
 アルコールを常用していると
 慢性肝炎から肝硬変へのスピードを
 早める結果となる。

          CTを撮ると、肝がんが
             →











 プロテアーゼ阻害剤の併用治療
 テラプレビルは、プロテアーゼを阻害することに
 よりNS3からNS4の領域のC型肝炎の増殖を
 止め、C型肝炎ウイルスを死滅させるものです。
 直接的に効果を示す薬剤。
 ただし、副作用もある。
 また、インターフェロン治療でウイルスが陰性化
 肝機能が正常になればOKか?
 13年後に肝がんが見つかった事例がある。




 2.B型肝炎


 B型肝炎ウイルス(HBV)の感染が
 持続することによって起こる病気です。

 1)出産時の母子感染
 2)汚染された注射器による医療行為
 増えている感染経路
 3)消毒されてない器具を使ってピアスの
   穴を開ける
 4)性交渉
 5)欧米に多いウイルス遺伝子型(ジェノタイプA)
   による急性肝炎が増加




















 
 B型肝炎はC型と異なり,肝炎が発症した段階で,
 いきなり肝臓がんヘーーーーーと
 飛躍する確率が高いことが知られている。




 





   
  GOT  25IU/L
  GPT  11IU/L
  PLT  350000個/μl

  注意!!
  HBs  抗原陽性
  HBV-DNA(B型肝炎ウイルス核酸)
       7.1 LGE/mL






  治療方法

 1)経過観察 
   ウィルス量の変化をみることが基本
 2)抗ウイルス薬
 3)肝庇護療法(かんひごりょうほう)、








 


 核酸アナログ薬
 <ラミブジン(LAM),アデフォビル(ADV),
     エンテカビル(ETV)>
  B型肝炎ウイルスの増殖を完全に抑える
  ことができず、B型肝炎ウイルスが子供から
  大人になるのを止めるだけであり、
  子供のウイルスを減らすことはできない。
 ペグ・インターフェロン製剤
   HBV DNA(大人ウィルス)が減る程度は
   核酸アナログ薬に比べて少ないですが、
   HBコア関連抗原(子供ウィルス)も減少







 3.NASH :Non-alcoholic steatohepatitis(非アルコール性脂肪性肝炎)
 肝臓に脂肪が蓄積することで起こる肝炎。
 @原因 
 過食、肥満、糖尿病等やストレスにより、正常な肝臓に脂肪が大量に蓄積し、脂肪肝を伴う
 この脂肪肝を炎症細胞が攻撃することで、肝機能の低下・肝硬変などが起き、更に、
 肝硬変から肝がんに移行


 内臓脂肪型肥満の人はNASHになりやすい。
 メタボリック症候群(内臓脂肪、高血圧、高脂血症
  耐糖能異常、)の人は、心疾患、脳卒中による
 血管障害による死亡率が高いので、よけいに、
 注意が必要。





  
    糖尿病による肝がん発生率







 ANASHの治療

 減量が最も重要と考えられるので、
 食事療法・運動療法で生活習慣病を
 改善する。







 BMI が 35を越えると 25〜30%が
       40を越えると 70%
       NASH の可能性


 <食事療法>
  ・良質のタンパク質を積極的に摂る。
  ・規則正しく栄養バランスの良い食事
  ・タウリンを多く含む魚介類を摂る
  ・ビタミン(K)を積極的に
  ・アルコールは控える







  <運動>
  ・有酸素運動
   何時までも続けられる程度に
   小汗をかく程度の速さ
     普通に会話が出来る
     やや息がはずむ
   30分間を目安
   週末だけより、毎日
   異常の条件なら肝硬変中程度まで問題ない
   慢性肝炎ならもっと高い運動




 


 <薬物療法>
  ・インスリン抵抗性改善薬
     チアゾリンジン誘導性(ピオグリタゾン)
     ビグアナイド(メトホルミン)
 ・抗酸化薬(ビタミンE等)
 ・高脂血症治療薬(フィブラート系製剤)
 ・ウルソデオキジコール酸(ウルソ)
 ・除鉄療法(瀉血、鉄制限)
 ・アンジオテンシンU
  阻害薬(ACE阻害薬、ARB等)




 肝臓病での日常生活の注意
 1)風呂は
  ・熱い風呂、長風呂は避ける(肝臓の血が少なくなる)
  ・食後1時間は、空ける
 2)運動
  ・適度な運動を心がける
 3)食事
  ・バランスの良い食事を心がける
  ・カロリー過多にならないように
 4)旅行
  ・肝硬変中程度までは可能
  ・無理の無いスケジュールでゆったりと
   保健証を忘れずに!!