平成28年 新年講習会

 日時 平成28年1月6日 PM2:00〜4:30
 場所 万葉ホール

「慢性痛に対する薬物療法のUPDATE」
                                  奈良県立医科大学 麻酔科学教室 川口 昌彦氏
 
1.高齢者の不健康の原因は、「痛み」・・・・・とれば、健康寿命が伸びる
2.ロコモティブシンドローム(ロコモ)
  運動器の障害によって、移動機能が低下した状態
  また、運動器不安定症は、ロコモが進んだ状態で、日頃から無理のない範囲で、体を動かす事が必要
  <痛みで動かさないことが大きな問題>

 3.痛みに対する薬物療法
    
痛みの伝導路

 

 




 笑うと忘れている。







 @痛みの分類
  ・侵害受容性疼痛                       ・神経障害疼痛    

   
   ・心因性疼痛

  A痛みの治療薬
   ・解熱鎮痛薬 
NSAIDs:エヌセイド
  (Non-SteroidalAnti-inflammatory Drug)

   ・アスピリン(バファリンRなど)
   ・ロキソプロフェン(ロキソニンRなど)
   ・ジクロフェナク(ボルタレンRなど)
   ・インドメタシン(インダシンRなど)
   ・メフェナム酸(ポンタールRなど)
   ・スルピリン(メチロンRなど)
   ・アセトアミノフェン(アンヒバR、カロナールRなど
      (1.5g→4g/day)

 副作用
  ・消化管粘膜障害 ・腎機能障害 ・凝固障害
  ・心血管障害  ・喘息発作 ・分娩遅延
   
   COX-2の選択的抑制がよい?

 リスク
  ・高齢者では、COX-2の選択的障害薬を含むNSAIDsは、慎重に患者選択を行い、限定的に使用する
  ・アセトアミノフェンがファーストチョイス
  ・NSAIDsによる心血系イベント、腎機能障害などが危惧される
  ・中程度から高度の痛みと、それに伴う機能障害には、オピオイド使用を考慮すべきである。
 
 アセトアミノフェンの投与法
   NSAIDsより、副作用は、少なく使いやすい
  ・開始量:325〜500mg   4時間毎
        500〜1000mg  6時間毎
  ・最大投与量    4000mg/日
  ・肝機能患者やアルコール大量摂取既往患者は、50〜75%にとどめる
  ・副作用:肝機能障害

 鎮痛補助薬(抗うつ薬、抗てんかん薬)
  第1選択薬:ノルトリプチン、アミトリプチン、               プレガバリン、ガパペンチン
 中枢におけるセロトニン・ノルアドレナレン再取り込み
 阻害薬で下行性抑制系を賦活する

  
    第2選択薬:ノイロトロピン、メキシレチン

   ・オピオイド
     第3選択薬:フェンタニル、モルヒネ、トラマドール、ブプ

   ・オピオイド鎮痛薬の使い方
      慢性病の治療にも麻薬が推奨されるようになったが、がんの痛みの治療とは、全く異なる。
     モルヒネ、フェンタニル
      乱用、依存、退薬症状、長期処方に伴う諸問題

  B痛みの分類
    ・急性痛
     原因がはっきりした痛み→以上が治癒すれば痛みも改善。
     挫傷、捻挫、骨折、脱臼、腱鞘炎、火傷、腹痛、等
    ・慢性痛

     イ)時期による分類:おおむね6ヶ月以上続く痛み
     ロ)急性と異なる病態
       ・原因が改善しても続く痛み
       ・原因治療が困難な痛み
       ・心理社会的因子の強い痛み
     ハ)急性がんとアプローチが異なる
       慢性がんに移行されないことが重要