平成29年 夏期講習会

 日時 平成29年8月17日 PM2:00〜4:30
 場所 万葉ホール

「頻尿から始まる前立腺・膀胱・腎疾患の話題
                      奈良県立医科大学 泌尿器科 教授 藤本 清秀
下部尿路   
  正常な機能
   ・数十秒で膀胱が空になる
   ・スッキリと爽快感を生む



1.過活動膀胱 (尿意切迫感を呈する状況)
 @貯尿
  ・排尿までの間、尿をためておく
  ・貯尿が生活時間の大半
 A貯尿症状
 ・昼間/夜間頻尿
  日中のトイレ回数が多い。就寝後、トイレのために1回以上起きる
 ・尿意切迫感
  突然がまんできないような強い尿意を感じる
 ・切迫性尿失禁(UUI)
  突然がまんできないような強い尿意を感じ、トイレに間に合わずもらしてしまう)
 B排尿症状
 ・尿勢低下・尿線途絶・腹圧排尿・排尿遅延
 C排尿後症状
 ・残尿感・排尿後尿摘下

2.原因
 @神経因性(神経因性膀胱) 10〜20%
  「膀胱に尿がたまった」「まだ尿出してはいけない」等、脳との信号のやりとりが正常でない
 ・脳幹部橋より、上位の中枢障害
  脳血管障害(脳卒中や脳梗塞等)、パーキンソン病、痴呆、脳外傷、脳腫瘍
 ・脊髄の障害
  頸椎症、脊椎間狭窄症、脊髄損傷、多発性硬化症、二分脊椎など

 A非神経性 80%以上
 ・下部尿路閉塞(前立腺肥大症)←男性
 ・加齢
 ・骨盤底筋の脆弱化←女性



3.過活動膀胱の治療
 @薬物療法
 ・抗コリン薬(膀胱平滑筋の収縮抑制)
  「アセチルコリン」が神経の末端から出ることによって、膀胱を収縮させる。
  このアセチルコリンの働きを少なくすることで、膀胱の異常な収縮を抑える。
 ・β3受容体作動薬(膀胱弛緩作用)
  β3受容体に作用し、膀胱平滑筋を弛緩させる。ミラベグロン(商品名ベタニス)
 ・α1受容体遮断薬(膀胱弛緩作用)
  自律神経の過剰な命令によって緊張している前立腺や尿道の筋肉が、弛緩させる
 ・PDE5阻害薬(膀胱の血流促進作用))
  バイアグラ
 A行動療法
  膀胱訓練
 B電機・磁気刺激治療
  骨盤底筋の収縮力を強化したり、膀胱や尿道の神経のはたらきを調整する治療
  過活動膀胱だけでなく、腹圧性尿失禁にも効果がある

4.夜間頻尿
  夜間に排尿のため「1回以上」起きなければならないと云う訴えであり、そのことにより困っている状態
  @膀胱容量の減少 ・・・膨らみが悪い
   @夜間膀胱容量低下
   ・過活動膀胱
   ・間質性膀胱炎
   ・高血圧
   ・前立腺肥大症
   ・動脈硬化
   ・睡眠障害
  A夜間尿量の増加
   
   {夜間尿量(午後10時ー午前6時)}/24時間尿量 >=35%
 
   原因は、
  @水利尿  
   ・水分過剰摂取
   ・薬剤(抗コリン剤等)
   ・脳血管障害(口渇中枢障害等)
   ・高血圧
   ・鬱血性心不全
   ・アルコール、カフェイン等過剰摂取
   ・抗利尿ホルモン分泌低下
  A浸透圧利尿
   ・糖尿病
   ・利尿剤
   ・ネフローゼ
  B睡眠時無呼吸症候群
 


 対策・治療
 @飲水指導・制限 →排尿記録の活用 
   水分摂取を多くすることで、脳梗塞や心筋梗塞を予防できたとする論文はない。
 A行動療法・運動療法
 B薬物療法
  ・抗利尿ホルモン薬
  ・日中(夕方)の利尿薬
  ・非ステロイド性鎮痛薬
  ・降圧薬(高血圧・心不全)





 日常生活で注意すること
  ・軽い体操や散歩など適度な運動
  ・アルコールやカフェインを含む飲料はほどほどに
  ・下半身を冷やさないようにしましょう
  ・便秘に気をつけ、肥満の改善
  ・適度に水分のとり、過剰の摂りすぎに注意
  ・刺激の強い食べ物は避ける
  ・運転など長時間座った姿勢を避ける
  ・外出時などは、早めにトイレに行く



5.前立腺肥大症と前立腺がん



 前立腺がん
 @特徴
  ・高齢男性に多い
  ・進行が比較的ゆっくり
  ・早期であれば根治が可能
  ・内分泌療法が有効
 A症状

 

 B治療
  @放射線治療
   ・組織内照射法(密封小線源療法)
   ・外照射療法
  A外科治療
   ダビンチXi