平成30年 夏期講習会 日時 平成30年8月17日 PM2:00〜4:30 場所 万葉ホール 「睡眠時無呼吸症候群と生活習慣病」 奈良県立医科大学 呼吸器内科学 山内基雄氏 1.眠くなる病気は、 @睡眠時無呼吸症候群 無呼吸のために睡眠が障害され、日中に眠気などの諸症状を引き起こす病気をひっくるめて示す言葉 Aナルコレプシーなどの中枢神経の病気 B足がむずむずして眠れない病気 → むずむず脚症候群 C単なる寝不足や概日リズム障害 2.ICSD-3(The International Classification of Sleep Disorders:睡眠障害国際分類) ・不眠症 ・睡眠呼吸障害群 閉塞性睡眠時無呼吸障害群 中枢性睡眠時無呼吸障害群 睡眠関連低換気障害群 睡眠関連低酸素血障害 ・過眠症群 ナルコレプシー、突発性過眠症、睡眠不足症候群 ・概日リズム障害 概日(circadian)とは、「おおむね一日」という意味。、 概日リズムとは、1日の規則的な変化のことであり、その人の体内時計と云われ、 年をとると、早寝早起きも同じだが、概日リズム睡眠障害があると、不適切な時間帯に眠ってしまい、 必要な時刻や望む時刻に就寝したり起床出来なくなる。 ・睡眠時随伴症群 レム睡眠行動異常症群、睡眠遊行症、夜尿症 等 ・睡眠関連運動障害群 むずむず脚症候群、歯ぎしり、周期性四肢運動障害 等 ・その他の睡眠障害 睡眠関連てんかん 等 3.閉塞性睡眠時無呼吸障害群(OSAS: Obstructive Sleep Apnea Syndrome) @病態(なぜ睡眠中に上気道は、閉塞する?) ![]() A原因 肥満:中年以降、体重が増え、上気道周囲の脂肪(軟部組織)により、上気道が狭くなる。 それが睡眠時無呼吸症のリスクになっている。 一般的には20歳頃の体重が理想的であると言われています。 骨格:欧米人と比べると、顎が小さい日本人は、気道が狭くなりやすい。 首の短い方や扁桃腺の大きな方も、気道が狭くなる。 ![]() 欧米人 ← |→日本人 アルコール摂取:アルコールを寝る前に飲むことにより、気道の粘膜がむくんで、気道が狭くなる。 高血圧、糖尿病: B睡眠パターン ・健常人の睡眠パターン 明け方は、浅い睡眠で占められREM睡眠の割合が多い ↓ ![]() ・OSASの睡眠パターン ![]() ・終夜睡眠ポリグラフ検査(典型的なOSASの一例) ![]() 酸素飽和度が80%付近に下がると、脳が起きる。 COSASの治療 ・体重減量 ・内科的治療 経鼻的持続陽圧治療(CPAP:Continuous Positive Airway Pressure) ![]() ・歯科的治療 口腔内装置(マウスピース) ・外科的手術 UPPP、咽頭、扁桃、アデノイド切除 ・薬物療法 抗アルドステロン薬 D閉塞性無呼吸における生理学的変化 →間歇的な低酸素暴露と再酸素化 (一旦著しい低酸素状態にあった生体が再酸素化される際に活性酸素が過剰に産生される) →胸腔内圧の変動 →脳波上の一過性覚醒 酸化ストレス亢進・交感神経活動亢進 →細胞の核内の転写因子であるNF-kappaBが活性化される。 NF-kappaBは、炎症過程で重要な役割を果たす →全身性炎症を引き起こす様なサイトカインが産生される →血管内皮における炎症 →動脈硬化 動脈硬化形成 動脈硬化の進展が心血管イベントをもたらす ![]() EOSASが糖尿病を引き起こす? OSASー間歇的な低酸素暴露 →インスリン産生細胞である膵β細胞 →NF-kappaBが活性化 →膵β細胞の機能傷害あるいは細胞死 →糖代謝異常の発症 F睡眠不足は肥満の原因 ・睡眠時間が短い人は肥満になりやすい ・睡眠時間が短いとレプチン(食欲を抑制するホルモン)が低下し、グレリン(食欲増進作用)が増加 → 過食 → 肥満 G睡眠衛生と睡眠時無呼吸症候群 OSAS患者は、睡眠衛生が良くないことが多いため生活習慣病の原因にもなる ・CPAPを装着することなくリビングで消灯せずに寝込む ・日中、長時間昼寝をしてしまう ・CPAPを装備しても、シフトワーカーでは、日中遮光せずに寝ることもある |