平成30年 新年講習会 日時 平成31年1月8日 PM2:00〜4:30 場所 万葉ホール 「感染症のトピック2019」 奈良県立医科大学 感染センター 笠原 敬氏 1.メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA) 黄色ブドウ球菌とは、ヒトや動物の皮膚、消化管内などの体表面に常在するグラム陽性球菌で、 重症な感染症の原因となる。 メチシリン(Methicillin)は、天然ペニシリンに耐性をもつ菌を対象に1960年に作られた半合成ペニシリンで、 実際にはこの様な抗菌薬に耐性をもって、効かなくなった。 MRSA(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus、MRSA)は、黄色ブドウ球菌が薬剤耐性化したもの。 2.多剤耐性緑膿菌 緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa )は、ペニシリンやセファゾリンなどの第一世代セフェム薬に自然耐性を示し、 テトラサイクリン系やマクロライド系抗生物質などの抗菌薬にも耐性を示す傾向が強い。 感染防御能力の低下した患者において、問題となっている。 3.多剤耐性アシネトバクター アシネトバクターは土壌や河川水などの自然環境中に生息する環境菌です。 多くの種類があり、通常のアシネトバクター感染症の治療に使用する抗菌薬がほとんど効かなくなっている菌。 ![]() 4.ESBL産生菌感染症 基質特異性拡張型βラクタマーゼ(Extended spectrum β-lactamases:ESBL)とよばれる酵素を産生する 細菌の総称。日本でも増加傾向にあり、入院歴のない一般の人からも分離されるようになってきました。 ![]() ![]() 4.何が起きているの!? ![]() ・小児の感染性胃腸炎患者から分離された基質特異性拡張型βラクタマーゼ産生菌 ・わが国の健常人におけるESBL産生菌の分離状況と特徴 なぜ耐性菌が増加しているのか? しかも健康な人が?? ![]() 菌は、回っている。 ・薬が効かない 恐怖の「耐性菌」河川や公園の池でも見つかる。 多剤耐性菌検出、2人死亡 静岡市立病院で高齢男女 5.生活環境の中の病原菌 東海大学の松本秀明教授と片野秀樹研究員らの調査により、温水洗浄便座の温水タンク内では 細菌が繁殖しやすいと言うことが判明した。 調査は、民家80カ所、公共施設28カ所で行われ、公共施設では、水道の水質基準の10倍、 民家では何と約31倍の一般細菌が検出されました。 民家では、4カ所から大腸菌群が見つかり、内1カ所では、緑膿菌も検出された。 ![]() ・公衆トイレのハンドドライヤーが雑菌だらけ ・電車のつり革 ・ショッピングカート ・タッチパネル ・指を湿らせるスポンジ 6.耐性菌が増える理由 すべての細菌が病気を引き起こすわけではなく、また人間には非常に数多くの細菌がいる。 多数派の細菌が活躍している場合には、少数派の細菌は、活動少なく、すぐに病気を起こすわけではない。 @ A B ![]() 「抗菌薬投与」により、大多数の細菌がやられてしまうと、必要な菌たちも殺してしまい、 耐性菌の活躍を抑えてくれる菌がいなくなる。抗菌薬に対する耐性を得ていた少数派の細菌は増える。 日本感染症学会では、 ・同じ抗菌薬を使い続けることを避ける ・投与期間を厳密に考える ・分離された菌が原因菌か否かを見極める 厚生労働省健康局結核感染症課 抗微生物薬適正使用の手引き ![]() 感冒、気管支炎、急性副鼻腔炎、急性気管支炎、感染性胃腸炎には原則として 抗菌薬は不要 抗菌薬を使用する必要が有る場合は、アンモキシシリン 7.手指衛生 @まず手指消毒を優先 ・消毒効果が高い! ・いつでもどこでも出来る ・手荒れも少ない Aこんな時は手洗い ・眼で見て汚れている ・アルコールが効かない微生物(ノロウイルス、アデノウイルス) 8.除菌 @一般的には、「除菌とは」物体や液体と言った対象物、または限られた空間に含まれる微生物の 数を減らすことを言う。 A「洗剤・石けん公正取引協議会」が定義する除菌とは、 「物理的、化学的または、生物学的作用などのより、対象物から増殖可能な細菌の数(生菌数)を 有効減少させること」で、この細菌には、カビや酵母などの真菌類は、含まない。 9.洗浄・消毒・滅菌 @洗浄 対象物からあらゆる異物(血液・体液・有機物など)を除去すること。 まずは、これを行わないと消毒や滅菌が十分に行えない。 A消毒 対象物から細菌芽胞を除く全て、または、多数の病原微生物を除去すること。 B滅菌 微生物を全て完全に除去、または、殺菌すること。 無菌保証レベルとして、10-5レベルが採用されている。 |