アンス

 

ホンアンズは中国の山西、山東、河北、遼寧の南部原産といわれ、中国東北部、華北一帯に分布、野生又は栽培される落葉性高木で、高さ4〜9m、樹皮は暗紅褐色で縦に細い裂け目がある。葉は互生、葉柄は2.5〜4.5pで帯紅色、葉身は卵円形で長さ5〜9p、細鋸歯縁、葉先は急に細まり尖る。花は小枝の頂に単生、白〜淡紅色で5弁、ときに重弁。雄ずいは多数。核果は心臓卵円形で径3〜4p、短軟毛で覆われ、側面に1本の浅い縦溝があり、黄紅色に熟す。石核はやや扁平、一方の縁は薄くて翼状となる。花期は3〜4月。果熟期は5〜6月。
 アンズは華北一帯に分布し、野生または栽培される。日本では甲信越と東北地方で栽培される。ホンアンズに類似するが葉や果実はやや小さくて葉身の長さ4〜5p、花は2生。果肉は比較的薄く、種子に苦味がある。この両種には多くの品種がある。
 日本ではアンズは果樹として栽培され、乾杏製造の副産物として生産されることがある。ジャム製造の副産物として生産されるものは製造に際し、熱処理されるものがあり、生薬としては品質が劣る。また、缶詰め、その他食用大型果実に品種改良されたものは種子の未熟なものが多く、薬用にはなり得ない
【 学 名】
ホンアンズ Prunus armeniaca Linne.
アンズ Prunus armeniaca Linne var.anzu Maximowicz
【 科 名 】
バラ科(Rosaceae)
【生薬名 】
杏仁(キョウニン):ARMENIACAE SEMEN

 日本薬局方収載の「キョウニン」の基原植物はホンアンズ Prunus armeniaca Linne.及びアンズ Prunus armeniaca Linne var.anzu Maximowicz に限定されており、モウコアンズ P.sibirica L.やマンシュウアンズ P.mandshurica Koehne.は日局の「キョウニン」としては用いられない。

 性     状:偏圧した左右やや不均等な卵形を呈し、長さ1.1〜1.8p、幅0.8〜1.3p、厚さ0.4〜0.7pである。一端は鋭くとがり、他の一端は丸みを帯びてここに合点がある。種皮は褐色。ほとんどにおいがなく、味は苦く、油ようである。

【使用部位 】
種子
【 適 用 】
漢方処方用薬であり、鎮咳去痰薬とみなされる処方及びその他の処方に配合される。また、キョウニン水の製造原料とされることもある。
【 成 分 】
青酸配糖体アミグダリン:amygdalin約3%、脂肪油30〜50%を含み、その他、oleic acid、linoleic acid、palmitic acidをはじめtriglyceride、phospholipidを含む。
【漢方処方例 】
麻黄湯、杏蘇散、桂麻各半湯、五虎湯、潤腸湯、神秘湯、清肺湯、麻杏甘石湯など
【採取時期 】
夏季、果実が熟したとき
【調製法 】
夏季、果実が熟したときに核をとり、風通しの良い日陰で乾燥する。9〜10月頃、核を割り、種子を取り出し、さらして乾燥する。(この時期に取り出した種子は膨らみが大きい)
【 産 地 】
日本産は少なく、中国、北朝鮮からの輸入で需要がまかなわれている。  中国(華北、内蒙古、甘粛)、北朝鮮