中国東北部、華北、西北地方から東シベリア、朝鮮半島にかけて自生する多年生草本。高さ50〜80cm、茎は直立し分枝する。葉は互生、2回3出複葉、小葉は狭卵形、披針形、または長楕円形、無毛でやや厚く光沢がある。初夏に径約10cmの美しい薄紅色または白色で大形の花を枝先に単生する。がく片は3〜5枚、最外側のものはときに葉状となる。花弁は5〜10枚、またはそれ以上、雄ずいは多数、雌ずいは3〜5本である。特に「大和芍薬」と称され、古くから奈良県下で栽培、育成されてきた品種の花は一重咲きで、花弁は8〜13枚であるという特徴を持つ。その中でも白花で根の成長が良く、収量が良い品種に「梵天種」と呼ばれるものがある。また、花後に袋果を3〜5結び、各果に数個、球形の種子を内蔵する。
シャクヤクはその花が、美しいため、かつて中国では同属のボタンと同様に貴ばれ、「花相」と称されていた。
日本には自生せず、奈良時代に薬として渡来したと言われている。江戸時代には観賞用として和芍と総称される多くの園芸品種が作り出された。現在、芍薬には江戸時代から育成されてきた和芍系統、シベリア及び中国から欧米に渡り、18世紀に作出された洋芍系統、ヨーロッパにもともと自生しているものを園芸的に改良したオランダ芍薬系統等があり、近年は雑種間によって得られたハイブリッド系統も増えている。薬用には和芍系統の品種が用いられ、ボタン同様、薬用を目的に栽培する場合、根の発育が良くなるように花の蕾を摘み取る。
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【 学 名 】
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Paeonia lactiflora Pallas |
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【 科 名 】
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ボタン科(Paeoniaceae) |
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【生薬名】
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芍薬(シャクヤク):PAEONIAE RADIX
芍薬は古方派の漢方医学(傷寒論を重視する日本の伝統的流派)においては、白赤の区別をつけないが、中国で近年隆盛な中医学では、調製法によって「白芍」と「赤芍」に大別し、それぞれ異なった性味や効能を有する薬物として区別して配合されている。従って、用途がある以上、白赤の区別を明確にする必要があり、以下のように区別されている。
白芍:芍薬の根の外皮を除去して乾燥したもの。コルク皮を除いた後、更に湯通しして乾燥させたものを真芍を呼ぶ。この真芍はかつては輸出もされていたが、現在は国内では生産されていない。現在、日本市場に流通しているの芍薬とは白芍のことである。
赤芍:シャクヤクの根を皮付きのまま乾燥したもの。外面は赤褐色。 中国産の芍薬の主な基原植物にはPaeonia lactiflora Pallas
、P.obovata Maxim.、P.veitchii Lynch.の3種が使用されている。 しかし、第13改正日本薬局方第一追補において「シャクヤク」の基原植物はPaeonia lactiflora Pallasに限定された。
性 状:円柱形を呈し、長さ約7〜20p、計1〜2.5p、外面は褐色〜淡灰褐色で明らかな縦じわ及びイぼ状の側根の後と横長の皮目がる。横断面はち密で淡灰褐色を呈し、木部には淡褐色の放射状の線がある。特異なにおいがあり、味は初めわずかに甘く、後に渋くてわずかに苦い。
芍薬は、太くて内部が充実し、やや柔軟性を帯び、内部が、微赤色〜白色を呈し、収斂性とやや苦みがあり、芍薬独特の臭いが強いものが良品とされる。
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【性 状 】
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円柱形を呈し、長さ約7〜20p、計1〜2.5p、外面は褐色〜淡灰褐色で明らかな縦じわ及びイぼ状の側根の後と横長の皮目がる。横断面はち密で淡灰褐色を呈し、木部には淡褐色の放射状の線がある。特異なにおいがあり、味は初めわずかに甘く、後に渋くてわずかに苦い。
芍薬は、太くて内部が充実し、やや柔軟性を帯び、内部が、微赤色〜白色を呈し、収斂性とやや苦みがあり、芍薬独特の臭いが強いものが良品とされる。
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【 適 用 】
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駆F血、血行促進、鎮痛、鎮痙、解熱、利尿、収斂などの効果があり、鎮痛、・鎮痙、通経、冷え症、風邪、皮膚疾患、消炎排膿薬として、特に婦人科諸疾患の要薬として用いられる。
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【 成 分 】
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主成分であるpaeoniflorin(ペオニフロリン):安息香酸を結合する変形モノテルペンの配糖体とその関連化合物(paeoniflorigenone、paeonilactonesなどのモノテルペン、テルペン配糖体)、その他ガロタンニン、安息香酸などを含む。
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【漢方処方剤 】
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単味では用いず、主として漢方処方に高頻度で配合される。
一般用漢方処方として210処方が指定されているが、その中で芍薬を用いた処方は55処方である。(出現率16.2%)
芍薬甘草湯、当帰芍薬散、四物湯など。 |
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【採取時期 】
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植え付け後、4〜5年経過した根を9〜12月にかけて堀り採る。 |
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【調製法 】
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掘り採った根をそのまま水洗し、周皮を除いて乾燥するか、砂または小砂利を混和してコルク層を削り去り、寒地では温風乾燥、暖地では風乾して仕上げる。
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【 産 地 】
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国内)北海道、群馬県、長野県、奈良県、島根、静岡
(国外)中国(河南省、山東省、安徽省、浙江省、四川省、貴州省)、韓国 |
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