生意気なガキだ。

……俺は、そう思った。






19.生意気盛り






「なんだよ! おまえだってガキじゃないか!!」



そう、俺に向かって、強気な目で睨みつけてきたのは、見習い竜騎士の、ほんの10歳ばかりの正真正銘のガキだった。

言われて俺は――。


……俺も、大人気なかったとは思うけど、……カチンときた。



「俺はこう見えても300年――。」



言いかけた言葉は、グレミオさんに止められた。

……まあ、正直、止めてくれて助かったけど。



「大人気ないよな、俺。」


本気で、子供みたいだ。

つぶやいて苦笑する。

そしてまた、あのガキの顔が浮かんだ。

頬を紅潮させて、ムキになって突っかかってくる。

自分という存在に、確固とした意志をもち、自信を持っていた。

あの歳の少年にしては、すごく強いと感じた。

……まあ、ある意味、うぬぼれが強かったのかもしれないが。

それでも、後で考えると、ものすごく微笑ましいヤツだった。



「何で、こんなに気になるのかなあ?」



自分に問い掛けて、テッドは答えに思い当たった。



「……ああ……。……昔の俺に、似ていたのかも。」



些細なことでムキになって。

自分では一人前だと思ってるからこそ、子ども扱いされることに反感を覚えて。

相手が誰であろうと、本気で一直線にぶつかっていく。


「……懐かしいなあ。」


しみじみとつぶやいて、爺くさいなと、ひとりで笑う。



「なんだ、可愛いヤツじゃん?」



『生意気盛り』というのだろう。

あの歳の男の子なら、全然不思議なことじゃない。

むしろ、当たり前のことだった。

その上で、あの少年が、自分自身に対して自信を持っていることから、他のガキより強さを感じさせるのだ。



「元気で、いいじゃないか。」



テッドは、自然に頬が緩むのを感じた。



「ま、見かけが近いって言っても、俺はず〜っと年上だからな。」



また、会う機会があったら、今度は挑発に乗らないよう、大人な対応を心掛けよう。



「きっと、あいつ、ティルと気があうぜ。」



俺が、保証する。

それでもって、ティルと2人で可愛がってやれば、すごく楽しいだろう。



「それ、いいな。」



そう言って、また、テッドは、あの勝気で生意気な小さな竜騎士を思い浮かべた。

ティルも、兄弟をものすごく欲しがっていた。

喜ぶに決まっている。



「今度、一緒に遊ぼうぜ。」



あの少年が、自分みたいに運命に翻弄されず、成長する様を見てみたい。

一体、どんな人間に成長するだろう?

あのまま増長を続けて、手のつけられない、身分や立場をカサに着るような、どうしようもない大人になるだろうか?

いや、おそらく、あの少年はそうはならないだろう。



「むしろ、ほとんどの人間と、動物に好かれる性質だな、ありゃ。」



彼の騎竜であるブラックに接するときの、優しい眼差し。

なんだかんだ言いながら、俺以外に対する事務的ではあるものの、とこか親しげな対応の仕方。

そして、何より、彼は竜騎士として、上官や仲間をとても尊敬し、その規律をとても大切にしている様子をみせた。

言ってみて、また、テッドは笑った。

何時の間にか、あの少年に対して、本当に好意をもってしまっていることに気がついた。



「まじで、あんな弟いたら、楽しいかもよ? ティル。」



そんな自分にあきれつつも、楽しい気持ちが湧き上がってくるのが、抑えられない。



「今度は、仕事じゃなくて、会えたらいいな。――フッチ。」



テッドはそうつぶやいて、マクドール家のテラスから、西方にある竜洞騎士団の地を仰ぎ見た――。





【END】




幻想水滸伝強化期間 第3作目です。

…えーと…。
これまた、よくわからないものを書いてしまいました。
あれ? …まあ、いいか。
フッチとテッドの出会いは、中々楽しくて好きでした。
「落ちてもいいヤツが一人いるけど。」とかいうフッチが何故か微笑ましくて、正直で、かわいかったです。
そんなことを思いながら書きました。
いつもいつも自己満足な作品で…汗。



(05.08.28)


一言感想


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