002.時の流れ
気が遠くなるような、長い長い年月を、おれは独り彷徨い歩いた。
時には、心から、おれを歓迎し、迎え入れてくれようとする人たちもいた。
おれに対して、何かを期待するでもなく、
ただ、友人として、一人の人間として、ともに歩もうと・・・。
でも・・・・・。
そのたびに、おれは戸惑い、そして顔をそむけた。
この手に、――がある限り、おれにはその人たちに近づくことなどできなかった。
おれの大切な人たちの魂を盗み取る。
呪われた紋章。
ソウルイーター。
こんなもののために、おれの村は滅んだ。
あの、女魔術師に滅ぼされた。
あの魔女が憎くないとは言わない。
でも、戦うことなどできなかった。
おれは・・・・・・。
あまりにも小さく・・・・・・。
弱い・・・・・・。
この呪われた紋章を守り、逃げることが精一杯だった。
300年、様々な土地を渡り歩き、様々な人と出会った。
でも、その人たちの顔は思い出せない。
自分が、どれほど周囲を拒絶してきたかがよくわかる。
おれの人生が、いかに色あせた無意味なものだったか・・・。
でも・・・・・・・・・。
真っ暗な、おれの世界に、一筋の光が差し込む。
おれは、この光に喜びを感じるとともに、恐怖する。
(近づきたい。)
(近づきたくない。)
(近づきたい。)
(近づきたくない。)
心の中で、永遠と続く、葛藤。
(・・・・・・近づいてはいけない・・・・・・。)
一歩近づいて、おれは立ち止まる。
後ろに下がれ。
自分に命令する。
これ以上近づいては、おまえが傷つく。
傷つけたくない。
おまえは強い。
わかっている。
でも、それでも、理屈じゃない。
何より、ただの人間の強さで、この呪われた紋章に勝てるわけがない。
そう、いくらおまえでも・・・。
でも・・・。
心のどこかで、期待する。
もしかしたら・・・。
おまえなら・・・?
永遠に続くこの地獄のような、孤独の日々。
歩み寄ることを恐れ、立ち止まったおれに、その愁順を理解しながらも、
一歩ずつ近づき、笑いかけてきた。
「僕はティル。
ティル・マクドール。
君は?」
「・・・おれは、テッド。」
「そうか、テッド。いい名前だね。
友達になろうよ。」
おまえは光。
真っ暗だった、おれの世界を照らす、存在。
おれの、太陽。
おまえだけは守りたかった。
おまえだけは傷つけたくなかった。
おまえだけは、幸せになってほしかった。
おまえだけは・・・・・・・・・・・・。
おまえの笑顔を守りたかった。
でも・・・。
おまえは、許してくれるだろうか?
ティル
おまえに、この呪われた運命を押し付け、この世を去るおれを・・・。
心から願う
おまえのその笑顔が失われないことを
心から信じている
おまえなら、どんな悲しみも乗り越えていけると
心から祈る
おまえの行方に幸多かれと・・・・・・
ティル・・・・・・
おれはいつでも、おまえを見守っている。
[END]
幻想水滸伝2作目。やっぱり暗い〜。
最近こんなヤツのほうが書きやすかったりして。
てか、私、暗いヤツ多いかも・・・?
テッド君です。
時間軸にしてTの開始直前から、紋章を坊に渡すまで・・・くらい。
Wにテッド君登場してから、特にお気に入り。
もっかいTをやりたい気分・・・。
(04.09.06)
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