005.風と大地









太陽が西に傾き、オレンジがかった光で草原を照らし始める頃、

おれはカラヤの村を抜け出し、フーパーとともに村からそう遠くない丘の上に来ていた。



「フーパー。そろそろ降りて」

「キュイイン!」

フーパーはおれの声に答えて、目的地に降り立つ。



おれはいつものようにフーパーの体を軽く叩いて礼を言うと、その地に降り立った。

周囲より競り上がった小高い丘。

あたり一面の草原が見渡せる。


そして、カラヤも・・・。


おれは現首長ルシアの一人息子として、このグラスランド、シックスクランのひとつ、

カラヤ族に生を受けた。


いずれはおれが守ることになる村。

風と大地の精霊に守られし、誇り高き戦士たちの住む村。

それが、おれの守るべきもの。


そのことに誇りを持ち、おれは、かつてこの地を守った「英雄」のように、

自分の大切なものを守りたい。

そのための武術の腕を、毎日磨いている。




人は誰しも、自然とともに生き、そして死ぬ。


それを理とし、受け入れて今を生きる。


そんな、強き人々が集う、グラスランドの広大な土地。




ただ・・・。

ときどき、自分が本当に守るべきものを理解しているのか、不安になるときがある。

そんなとき、こうして村から少し離れて、外側からその様子を伺う。

自分が守るべき村を、客観的に眺めてみる。

そのことで、新しく自分の内で気づくこともあるような気がする。



「おれが、守る」

声に出し、心に誓う。





グラスランドの世情は今、不安定だ。



グラスランドに住まう民を理解しようともせず「蛮族」とさげすみ、

ことあるごとに戦争を仕掛けてくるゼクセン。



「炎の英雄」との間に、休戦協定を執り行い、今は沈黙を守っているが、

いつ戦争を仕掛けてきてもおかしくないと言われるハルモニア。



他にも敵は数多く存在するだろう。



―そんな外敵から、おれが、この地を守る―


今は、まだ、力が足りないかもしれない。

まだまだ、母さんのように大局を見る力も足りないだろう。



でも・・・。


今、自分がもてる力で精一杯、自分ができることを行い、そして、大切なものを守りたい。



「おれは、強くなる・・・!!」


大切なものを守れるように。


カラヤの戦士の誇りにかけても。


・・・・・・・・・・・・。



いつの間にか、太陽は遥かかなた地平線から、姿を消し、あたりは闇に覆われかけている。


「フーパー! 戻ろう。そろそろ皆が心配する」

「キュイイイイイン!!」


おれは、来たときと同じようにフーパーの背に乗る。



これから、このグラスランドがどうなっていくのかは、誰にもわからない。

自分たちが、生きたいように生きること。

そんな、基本的なことが、とても難しい。


けど・・・・・・。


『守りたいものは、ここにある』







風と大地の精霊に祈る。





この緑の大地に、精霊の加護があることを・・・・・・・・・。





【END】




ヒューゴが別人・・・?
まあ、他のキャラも大概ですが・・・。
私が書くと皆傾向が偏ってしまうような・・・?
・・・精進します(ホントかよ←突っ込み。最近ちょっと自信がなくなってきたり・・・)
とりあえず、どんどん小説アップして、経験値を上げていきます。
見捨てずにお付き合いくださいませ。


(04.09.27)


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