015.郷愁
『約束の石版』
戦況の合間をぬって、フッチは一人、石版の地に降り立った。
この場所の存在を知ってから、
フッチは、時折、ブライトとともに訪れていた。
今日も、ブライトはフッチのそばにいる。
「キュオオオン・・・」
相棒のフッチが、ここを訪れるたびに元気がなくなることに、
ブライトは気づいている。
最近、ここに行くと告げると、
悲しそうに鳴き、
しばし拒絶するようになった。
それでも、フッチが一人で行こうとすると、
後からブライトはついてくる。
「ブライト・・・」
フッチに鼻を押し付けて甘えるようなしぐさをするブライトに、
苦笑しながらフッチはその顔をなでてやった。
このブライトに出会ってから数年後、フッチは自分の故郷である竜洞へと戻った。
でも、けして、彼らのことを忘れたことはなかった。
「彼」は、いつもこの前に立っていた。
話しかけると、あの、愛想もそっけもない態度で
『何?・・・何か用?』
と答えた。
それでも、時たま見せる、やさしい表情。
ひねくれた、生意気な言動の影で、
傷ついた仲間を文句を言いながらも、
自ら率先して回復させたりしていた。
何より、彼の言葉は、時として辛らつに聞こえたとしても、
誰よりも、先を見つめ、冷静に状況を判断していたに過ぎない。
彼は、とても優しい「人間」
自分にとって、いや、自分たち・・・過去に彼と同じ時を過ごした仲間たちにとって、
「彼」は大切な友人だった。
「・・・どうしてなんだ? ルック・・・」
目の前にはいない。
所詮、自分の今見ているものなど、過去の思い出が見せる幻に過ぎない。
それでも・・・
何かを言わなければいけない気がした。
「俺たちじゃ、君の力にはなれないのか・・・?」
どうして、ここまで思いつめるまでに、自分たちに会いには来てくれなかったのだろう?
どうして、彼の心の中の闇に、気づくことができなかったんだろう?
どうして、なにもかも一人で決めて、一人で背負おうとしてしまうのだろう?
どうして・・・?
「ブライト、おまえは覚えているか?」
「キュイ?」
「・・・(彼を)・・・」
「キュイ・・・」
話しかけておきながら、言葉にできなかったフッチの言葉を、
ブライトは敏感に読み取ったようだ。
その暖かさに、胸が苦しくなる。
「彼」の傍に、彼のことを思い、泣いてくれる人はいるのだろうか?
彼は、決して一人じゃない。
そのことに、気がついているのだろうか?
伝えたい。
君は、けして一人じゃないのだと・・・。
前の大戦のときに、ともに戦った人が、この戦いにも何人か参加してる。
アップルさんに、ビッキー、トウタ・・・
みんなが、君の事を気にしている。
心配している。
たとえ、今は戦う立場になっていたとしても。
こんなにも、君のことを心配している人間がいるのだと。
君は、本当に気づいていないのか?
そして、ここにはいない彼らも・・・。
「ティルさん、リオウさん・・・。あなた方がいれば、ルックも少しは考えてくれたでしょうか?」
少なくとも・・・。
「俺が何かを言うよりは、あの二人の言葉のほうが、ルックには届いたかも・・・な。」
つぶやいて、苦笑する。
こんな年になっても、あの当時、まだ少年だった彼らに頼ってしまう。
情けなくて、少し、悲しい。
実戦の経験をつんで、力だけは十分に成長しても、
心のほうが、彼らに追いついていない気がする。
自分は、いつも彼らの後ろを歩いていた。
それがイヤだったわけじゃない。
むしろ、誇らしいことだった。
彼らは、フッチを弟のように可愛がり、一緒に戦うことを喜んで受け入れてくれた。
その、彼らは・・・ここ・・・には、いない。
「俺に・・・、何ができるだろう・・・?」
ここいる、自分にしかできないことが、きっとある。
自分が、それに気づいていないだけなのだ。
そうだと思いたい。
でなけれは、自分がこのときにまた、この場所で宿星に選ばれた意味がない。
でも、もう、ルックとの対決は避けられない。
「俺にできることなんて、限られているかもしれない。」
それでも・・・。
あのやさしい、孤独な魂を救いたい。
昔のように、あの皮肉な口調で話してほしい。
それが無理なら・・・
せめて、安らかな気持ちで、彼が眠れるよう、自分のもてる力全てで、彼にぶつかっていこう。
彼は、自分が真っ向から戦って敗れた場合、
けして、それを認めようとしないはずがないのだから・・・。
それが、彼にとって救いとなるのなら、自分にできることは・・・・・・・・・ある。
「ルック・・・」
風が・・・吹く。
フッチの乾いた心を癒すように・・・。
でも・・・・・・・・・
自分は、もっと温かい、優しい風を知っていた。
けして、それを忘れはしないだろう・・・。
ことあるごとに思い出す。
自分の第二の故郷・・・。
この『約束の石版』があった地を・・・。
【END】
またまた暗い・・・。フッチでした。
フッチ大好きです。
T〜Vの全てにラスボスまで連れて行ってました。
Vが出たとき、かなり嬉しかったですね。Uから続くキャラが少ない中、
フッチがいたことに狂喜しました。
友人にはTをやってる時点で、
「何でフッチなんか最終戦にいれてんの〜?」
って不思議がられてましたが・・・。
いいじゃないですか! 好きなんだもん!!
ちなみに、Tの最終戦は、坊、フッチ、ルック、ビクトール、フリックで、カスミ。
Uの最終戦は、主人公、坊、フッチ、ルック、サスケで、
あと一人が・・・キニスン・・・だったかな?
(間違いました。クライブのほうが多かったみたい。セーブデータ確認。)
これを見るだけで、真田の趣味がわかるよーな・・・(汗)
(04.09.11)
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