040.安らぎ
「マクドールさん!」
バナーの村でぼくは、噂でしか知らなかったトランの英雄、
ティル・マクドールさんに出会った。
マクドールさんとともにトランの首都グレッグミンスターまで、傷ついたコウ君を連れて行った。
そしてそこで、マクドールさんは、ぼくたちの戦いに手を貸そうと言ってくれた。
マクドールさんは、ぼくの憧れだ。
とても優しい目をしている。
そして、外見からは想像もつかないくらいに強い。
棍を振り回す姿など、まるで舞をまっているように美しく、見とれてしまう。
惚れ惚れする。
ジョウイと同じ武器。
でも、受ける感じがぜんぜん違う。
「どこが?」と聞かれると、はっきりと答えることはできないのだけれど・・・。
言ってみれば、ジョウイとは、お互いに背中を合わせて戦いたい。
・・・相手の背中を守っていたい。
肩を並べて立っていたい。
そんな感じ。
マクドールさんは・・・。
なんていうのかな、ぼくの前に立っていてほしいんだ。
どんなときも、その迷いのない強さで、皆を引っ張っていってほしい。
仮にも、一軍を率いるぼくの言うべきことではないのだけど・・・。
でも、彼はぼくの憧れの人だから・・・。
子犬のようにまとわりつくぼくを、いやな顔ひとつせずに相手をしてくれる。
「ティルでいいよ」
と言って、そして、笑い返してくれる。
突然、リーダーとして立たなければならなかったぼくは、
その重責で今にも押しつぶされてしまいそうだった。
そんなときに出会った人。
マクドールさんはぼくの下にはけしてつかない。
どちらかというと、斜め前にいて、少しぼくを引っ張ってくれる感じがする。
横に、並んで立ってくれる。
特別何をするわけでもない。
ただ、そこにいるだけで、等身大のぼくを見てくれるだけで、こんなにも安心できる。
以前は、ぼくと同じような立場にあり、たくさんの人を統率していた。
その経験からか、それとも彼自身の持つ特性なのか。
彼はそこにいるだけで周囲の人に安らぎを与える。
目の前に目標にできる人がいる。
それだけで、ぼくの心を穏やかにさせてくれる。
でも、ふと思う。
マクドールさんにはそんな人がいたのだろうか・・・?
たしかにマクドールさんは、元赤月帝国の将軍家に生まれた。
そして、その時から人の上に立つ事が決まっていて、
ぼくとは違って、そうなるべく育ったのだろうけれど・・・。
ぼくが寄りかかっても、マクドールさんはやさしく受け止めてくれる。
・・・・・・・・・・・・。
今は、このままでいてほしい。
けして、この状況が好ましいと言えるものではないことは、わかっているけれど。
ぼくが、もう少し、自分の足で立って歩けるようになるまで・・・。
それまで、甘えさせてください。
いずれ、必ず、ぼくもマクドールさんが頼りにできると思える人になって見せます・・・!
だから。
今は、まだ・・・。
このままで・・・・・・。
【END】
幻想水滸伝、初のカップリング・・・?
微妙に主→坊気味だと思うのですが、一応、友情(憧れ)のつもりです。
お好きなように想像してください。
読んでくださってありがとうございます。
(04.09.21)
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