065.・・・・・・あっ
「彼女」のことは解放軍の時から、知っていた。
魔力は高いくせに、それをうまく扱うことができず、自分だけでなく周囲に多大な迷惑をかけてまわる。
しかも自覚がないという、ある意味非常にやっかいな存在。
名前はビッキー。
彼女に会ったのは3年前。
トラン湖のほとりのあの古城でだった。
確かあの時は、ぼくより年上だったくせに、このノースウィンドゥで会ったら、ぼくより年下になっていた。
全く不可解だ。
本人いわく、トラン共和国建国パーティーの最中にうっかりテレポートして、そのまま今回の天魁星のリオウの前に現れたらしい。
おまけに、その記憶の矛盾に、疑問も持っていないらしい。
「おかしなヤツ。」
いらだつことに、何故か気になる。
ある意味、彼女も『不老』に入ると思われるからだろうか?
そろそろ自分の成長も止まる。
忌々しいこの『真なる風の紋章』のおかげで。
レックナート様いわく、魔力が最も充実する年齢までは成長するということらしい。
ルックは誰にも気づかれないくらいの小さなため息をついた。
そのとき、ぼくが立っている約束の石板の左手の階段から、軍主を含む6人の人間が降りてきた。
どうやらこれから視察に出かけるらしい。
リオウは、ぼくの視線に気づくとひらひらと手を振ったが、反応を示さないぼくに苦笑して、そのままビッキーの側へ歩いていった。
ぼくはただ、その様子を目で追っていた。
リオウがビッキーに行き先を告げ、ビッキーはワンドを構えて術を発動した・・・。
「・・・・・・あっ!」
ビッキーの小さな叫び声。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
また、失敗したらしい。
ぼくはあきれて、あさっての方向をむいた。
まあ、瞬きの手鏡があればすぐに帰ってくるだろう、と・・・。
「・・・ルックく〜ん!」
ビッキーの弱りきった声が聞こえた気がした。
空耳であって欲しい。
「ルックく〜ん・・・!」
今度は半分泣き声だ。
ぼくはため息をついた。
「・・・・・・・・・・・・何?」
いやな予感。
「リオウさん、瞬きの手鏡落として行っちゃった・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・。」
(何だって!?)
確かに彼女の手に、いつもリオウが持ち歩いている瞬きの手鏡が乗っている。
どうやら、テレポートの失敗の瞬間に、リオウの懐から飛び出したらしい。
頭が痛い。
つまり、リオウたちは、自力で帰ってくるしかない。
めまいがする。
「いい加減、自分の能力くらい制御できるようになりなよ。・・・一体、何回失敗したら気がすむんだ!」
「ご、ごめん・・・・・・。」
ぼくの剣幕におびえて、小さな声であやまるビッキー。
ぼくは、またため息をついた。
怒ったってムダだ。
謝られたって、嬉しくもなんともない。
あきらめて、ぼくはロッドを構えて気配を探る。
ぼくの二度目の天魁星、リオウの気配。
すぐに見つけることができた。
幸い、今回は飛ばされた6人は一緒にいるらしい。
以前に、完全に全員ばらばらに吹っ飛んだことがあるのだ。
そのときのことを考えれば、今回、転移は一回で済みそうだ。
おまけに、飛ばされた先は同盟軍の領地内。
放っておいてもさほど支障はないと思われるが、あれでリオウもなかなか忙しい。
迎えに行ってやらなければ、かなりの時間のロスになるだろう。
「しかたない。」
ぼくはリオウの元へと、転移した。
――前言撤回。
彼女のことが気になるのは、『不老』だからではなく、
「ビッキーが失敗すると、全部ぼくが尻拭いをしなければならないからだ。」
前回同様、戦争が終わるまでこの状態が続くのは、正直うっとうしい。
ぼくの姿を見つけて、大喜びでかけてくるリオウを視界に捕らえながら、ルックは今まで以上に大きなため息をついた。
【END】
あはは・・・。ルック疲れてます。(ゴメンよー!)
ルック+ビッキーかな・・・?
ルックの成長する理由、どこかで設定を見たのですが、どこで見たのか思い出せず、うろ覚えのまま出してしまいました。
ビッキー、そんなに失敗はしないんですよね。
20回くらい使って1回くらい・・・?
もっと少なかったりします。
ていうか、私はあんまりビッキーの失敗を見たことがないです。
普通、もっと頻繁に失敗するものなのでしょうか?
(04.10.04)
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