シグナルが聞こえる。

これ以上、心を許すなと。

……また、同じ目に、自分から会いに行くのかと。



――これ以上、あの人に、近づくのは危険、だと……。





001.シグナル





「どうか、した?」



不思議そうに敦賀さんが、私の顔を覗き込んでくる。



コトリと、心臓が震える。



(――気のせいだ。)

無理やり、気のせいにするために、私は頭を強く振った。



「……最上さん?」



今度は、心配そうな声。



「いいえ! 何でもないんです!!」



お願い。

これ以上、優しい言葉をかけないで。

これ以上、……私の中に、入ってこないで……。

せっかく、ふさがりかけた心の傷が、また痛むから――。



……わかってる。

目の前の、この優しい目をした人は、あのバカとは違う。

自分勝手に、何の理由もなく人を傷つけたり、利用したりなんか、絶対に、しない。

それでも……。



(――怖い。)



また、昔みたいに、自分の全身全霊をこの人につぎ込んで――。



――もし、受け入れてもらえなかったら……。



ゾクリと、背筋が冷たくなる。



……それを考えると、私は一歩も動けない。



敦賀さんは、アイツとは違う。

違うから、例え受け入れてはもらえなくても、あの時ほど、傷つくことは、ない。



……でも。



――例え、それがわかっていても……。





…………………。





臆病になってしまった私は、それを隠すことを覚えた。

そのシグナルが何を示しているのかは気づいていても……。

……気づかない、振りをすることを――。



私は一世一代の演技をする。



「キョーコちゃん? 本当に、蓮のこと、なんとも思ってないの?」



社さんが、いつものように、不思議そうに私に尋ねる。



私は、ニッコリと笑う。



――社さんは、鋭い人だけど、この演技だけはみやぶらせたりしない。



私の、役者としての全てのプライドにかけてでも――。



「それは、どういう意味でしょうか? ……敦賀さんは、私にとって、尊敬する先輩です。目標です。……いつか、彼に認めてもらえる、立派な女優になりたいですね。」



そうして、本当に、心からの笑みを浮かべた私に、社さんは困ったように頭をかいた。



気づかれてはいけない。



いえ、気づいては、いけない。



……この、シグナルの意味を。





――絶対に。






【END】





…不完全燃焼…(汗)

ものすごい久しぶりに小説書きました。
…ってか、書きかけのやつを完成させただけなんですが…(滝汗)
…うーん…、うーん…。
何かおかしい…。
勘が戻ってないのか…? (いや、実力だ…苦笑)




(06.03.28)



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