共栄会:新年総会および講演会

日時  :平成18年1月7日(土) AM9:30~12;00
議題  :痛みの漢方薬(血液・水分代謝で痛みを緩和する方法)
講師  :近畿大学東洋医学研究所 森山健三
講演内容

1.最近、DPC(Diagnosis Procedure Combination)が、叫ばれている。
  私たちが支払う医療費は「出来高払い方式」という仕組みで計算されています。
  これは検査、注射、薬など、ひとつひとつの医療行為ごとに料金を設定し、その合計金額を
  支払うという方法です。
  最近になって、医療費の計算に「DPC(診断群分類)方式」という全く新しい方法が、
  一部の病院で試みられるようになりました。
  これは、病名や手術の有無などによって病気の種類を分類し、その分類ごとに1日あたりの
  医療費が決められるという方法です。
  その病気と入院日数に応じて費用が計算され、その間にどのような注射や検査、投薬が行なわれても
  費用は変わらないというものです。

  ただし、手術やリハビリ、特殊な検査や治療などは、出来高払いが適用されて別途加算されます。
  また、この分類にあてはまらない病気は出来高払い方式で計算します。
  DPCは、2003年に大学病院などで試験的に導入され、
  公立機関で82施設と民間病院62施設の計144施設で実施されています。
  また、主要診断群(MDC)の群分けに伴い、急性期病院・専門家病院・後方病院と分かれ、
  熊本方式と呼ばれ、うまく仕分けがされてます。

2.アンチエイジング(抗老化)
  アンバランスで病的な老化を積極的に予防し、治療すること。
  老化の原因と考えられる「ホルモン低下」「酸化ストレス」「免疫力低下」などを防ぐために、
  今まで医療として積極的に介入して来なかったサプリメント指導を含む栄養指導や
  運動・ストレスケア等も含めて対処することです。

3.漢方医学から見た「痛み」
  痛みは血と水がうっ滞する瘀血水毒によって起こると考え、お血を取り除く生薬や、
  利水効果がある生薬から構成された漢方薬を体格に合わせて用います。
  体格がしっかりしていて胃腸が丈夫な人は、疎経活血湯」「八味地黄丸が良い。

  「疎経活血湯」
   適応症
   体中に痛みが走り、昼軽く夜重いのは血虚である。この時服用する。
   全身刺すような痛みを治す。特に、左足の痛みがもっとも激しく、左に症状が出るのは、
   血の病変に原因がある。
   さらに、多くは、酒の飲み過ぎで、筋肉の力が失われた所に、風邪・寒邪・湿邪・熱邪なぞの
   邪気が体内に侵入している。
   こうして、熱と寒が重なると、筋肉のスジを傷つけ疼痛となる。この痛みは、昼に軽いが、
   夜に重くなる。
   治療方法は、経絡の血の流れを促進し、血を活性化して湿邪を除く。痛風とは異なる。
   日頃、アルコールを飲む方は、アルコールが抜けた時、腰から下肢に痛みが走る人は、
   注意が必要だ。
   作用および構成薬味
   「万病回春」では、疎経と活血により、湿邪も除くと、記されている。
    1.疎通成分(経路を疎通して、気の流れを促進する)
     威霊仙(イレイセン)・防已(ボウイ)・羌活(キョウカツ)・防風(ボウフウ)・白し
      あわせて、鎮痛・鎮痙作用とともに体表血管を拡張して軽い発汗作用をあらわす。
    2.活血成分(血の機能を活性化)
     当帰(トウキ)、川芎(センキュウ)・芍薬(シャクヤク)、地黄(ジオウ)
      豊富な栄養を含み、全身を栄養、滋潤し、神経機能を正常化させる。
      また、血管の循環を改善し、栄養物の分配、供給を強める。
     牛膝(ゴシツ)、桃仁(トウニン)
      消炎、鎮痛作用がある
    3.湿邪を除く成分
     蒼朮(ソウジツ)・白朮(ビャクジュツ)・茯苓(ブクリョウ)・竜胆(リュウタン)
      組織中の水分の流れを良くし、利尿作用により除く。
    4.健胃成分
     陳皮(チンピ)・生姜(ショウキョウ)・甘草(カンゾウ)
     脾胃を振奮することにより補血を補助します。
   
  瘀血(おけつ)  
  正常な血液はサラサラとして、滞りなく全身を巡ります。体のすみずみまで栄養をあたえ、
  私たちの健康を支えてくれます。
  ところが、何かの原因によって、血液の粘度が高くなると、サラサラとしてきれいなきれいな血液が、
  どす黒く粘りを増した状態になってしまうことがあります。
  こうなると、今までスムーズにながれていた血液のながれが悪くなり、体のさまざまな所で
  淀みや渋滞を起こすようになります。
  体の中の血液が正常に流れなくなってしまうのです。
  自覚症状
   ①胸満(つかえる)
   ②唇が痿える(うまく言葉が喋れない)
   ③舌が青い(舌尖静脈が怒張している)
   ④口が渇く(口の中が粘る、かわく)
   ⑤他覚的に見て、胸部が膨満している状態ではないが、
     患者自身は、腹が張っていると訴える(西洋医学では難しい領域)
   ⑥熱性症状があたかも、あるように大変苦しい状態を呈する
   ⑦口渇


  水毒
   水分代謝障害のことで、体内に余分な水分が有りながら、何かの理由でそれが
   血液中にスムーズに移行しないこと。
   血液中の水分が減少して、口渇、尿量減少の症状があらわれる。
   そのため、体内に余分の水分が有りながら益々、水分摂取過多になってくる状態のこと。
  症状としては、
   皮膚(汗)、皮下(浮腫)、目(涙)、鼻腔(鼻汁)、口腔(唾液)、気道(痰)、消化器(胃腸液)、泌尿器(尿)など、
   水の分泌の過多・過少であらわされる水分代謝の変調、分布の異常をいう。
   『金匱要略・痰飲咳嗽病篇』では、
    水毒を、狭義の痰飲(胃内停水)、懸飲(脇下の水滞)、溢飲(皮下の水滞)、支飲(肺水腫で
     喘鳴を伴う状態)の四つに分けている。

   頭痛、めまい、口渇なども水毒症状とされるが、これもまた局所的浮腫あるいは
   浸透圧異常と考えられる。
   水毒は気血の異常に伴って起こることが多いとされる。