共栄会:夏期研修会

日時  :平成22年8月17日(火) AM9:30~11;10
議題  :循環器系に対する薬の使い方
講師  :近畿東洋医学研究所 森山健三

講演内容
 高齢者は、今までがんばってきた分、現在社会で、ストレスを受けていろいろな症状が出ている。
 その中で、老化については、避けて通れない。
 年齢を重ねると、自分だけが取り残された感になり、情報を拒否してしまう。
 しかし、人は生きている限り、積極的に活動したり、身体に刺激を与えることによって
 遺伝子発現も刺激され、心身の機能は維持される。
 中医学的には、腎を強くすること。その元は、脾の胃腸活性である。
 また、ストレスの状況では、便が調子が悪い。良い時は、長い一本である。
 回避には、上薬といわれる高麗人参(人参の髭根中のサポニン)が、神経衰弱・不眠・ストレス潰瘍を
 改善する鎮静的な役割を持っている。
循環器系に対しては
 ・脂質代謝改善
  紅麹(べにこうじ)
  お酒や味噌・醤油等を発酵する時に使用される麹の類だが、一般の麹とは異なり
  鮮やかな紅色をしている。
  その中から、HMG-CoA還元酵素の働きを阻害すれば、コレステロールの生合成が減少される物質
  いわゆるコレステロール低下作用「ロバスタチン」が発見された。
   ロバスタチン(モナコリンK)の作用
   赤血球変形能、微少循環改善作用があり、長期の服用の安全性と心疾患の予防効果が
   証明されている。 ただ、医薬品と食品の併用は、好ましくない。

     ・高脂血症の危険因子       こんな人は注意!!
      ①血圧が高い             ①血糖値が高い
      ②ストレスが多い           ②よく酒を飲む
      ③几帳面                ③肥満
      ④よくたばこを吸う           ④魚より肉が好き
      ⑤運動が嫌い             ⑤甘いものが好き
      ⑥年齢が40歳以上          ⑥家族に心臓病の人がいる

 呼吸法
 呼吸することで、心や身体の機能の向上を目指す。吸うことより、吐くこと
 古くは、
 ・吐納導引法(呼吸体操法)
  春秋戦国時代の書物「荘子」に、動物の動きを真似して吐納導引をする道士の記述がある。
  「呼吸を深くし、古い気を吐き新しい気を入れ、熊が木にぶら下がるような格好をし、
   鳥がせわしく呼吸するような動作を取るのは、ひたすら長寿をはかるためである。
   これは、導引(どういん)の士、形を養う人で彭祖(ほうそ)のような長寿者の好むところである」
 ・有酸素運動の効果
  肺気量約6000ml(普通に呼吸している時は、500ml)
  効率の良い二酸化炭素の排出
  有酸素運動(マラソン選手の様な酸素を供給しながら運動する)により、心肺機能の強化され、
  末梢の血液循環が改善し、代謝もよくなって、中性脂肪値が下がり、善玉コレステロール値
   (HDL-C)が上がる。
  運動には、高脂血症、高血圧、糖尿病などの危険因子の予防・治療効果のほか、持続力をつけ、
  ストレスを解消するといった効果もある。

 駆瘀血薬
 似たような処方だが証により、違う
 ・桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)
  実証の瘀血、のぼせ、下半身の冷えは「上衝」によって起こるとされ、気の流れが逆流
  桂皮(ケイヒ)    健胃作用のほか発散作用(気の流れを整える)
  芍薬(シャクヤク) 消炎・鎮痛・抗菌・止血・抗けいれん作用
  茯苓(ブクリョウ)  サルノコシカケ科マツホドの菌核
             利水しても、正気を傷つけず、薬理作用は穏やかで、利水滲湿
  桃仁(トウニン)   破血去瘀・潤燥滑腸
              消炎性駆瘀血薬、浄血、鎮痛、緩下、消炎、解毒
  牡丹皮(ボタンピ) 清熱涼血・活血祛瘀、
              消炎性駆瘀血薬、解熱、鎮痛、鎮静、鎮痙、通経、排膿、消炎
 ・当帰芍薬散(トウキチャクヤクサン)
  虚証のお血、水毒による症状(全体的に血が不足)
  当帰(トウキ)    血に滋養を与え、血の循環を活性化し、
              腸を潤し、便通を良くする(緩下剤効果)。
  川芎(センキュウ) 鎮痙、鎮痛、補血、強壮
  蒼朮(ソウジュツ)  補裨益気・燥湿利水、健胃作用・利尿作用・鎮静作用
  沢瀉(タクシャ)   利水・滲湿・清熱、利水作用、コレステロール降下作用、
              血糖・血圧の降下作用、抗菌作用、抗脂肪肝作用
  芍薬(シャクヤク)  
  茯苓(ブクリョウ)

 ・四物湯(シモツトウ)
  虚証(虚弱)、寒証(冷え)、燥症(乾燥)、血虚(血流不足・貧血症状)

  地黄(ジオウ)   滋潤作用 血糖降下作用 温める作用 補血作用 
  当帰(トウキ)
  川芎(センキュウ)
  芍薬(シャクヤク)

老化遅延を考える
臓器製剤
 心臓(どうき、息切れ)
   動悸
    心臓の働きが低下すると全身に十分な血液を送り出せなくなり心臓は拍動数を増やす。
    その不足を補うために起こる。
    <症状> 心臓の拍動を強くまたは、速く感じる。脈拍が乱れると言った状態
           軽い運動で動悸を感じるようであれば心臓の働きが低下している。
   息切れ
    心臓の働きが低下すると、呼吸を活発かすることによる息切れ
    <症状> ハアハアと息が切れ、息をすることが難しい
           軽い運動で息切れを感じるようなら呼吸器疾患だけでなく、
           心臓の働きが低下している。

  牛黄、麝香(ジャコウ)、蟾酥(センソ)、羚羊角(レイヨウカク)、
 ・ろれつがまわらない、認知証→脳血管の改善
  麝香(ジャコウ) 
   加齢臭の除去
   麝香は、永く香りを溜め、また、他の香料の香りを保つ
   東大寺のお水取りの時は、治療薬は、牛黄、麝香だけ。
   在庫のある分だけ
  蟾酥(センソ)
    ヒキガエルの耳腺分泌物を集め乾燥させたもの
    強心作用、血圧降下作用、冠血管拡張作用、胃液分泌抑制作用、局所麻痺作用、
    抗炎症作用等がある。
    主成分は強心性ステロイドでブファリン、レジブフォゲニン、シノブファギン、ブホタリン等
 大宝心
           
 血圧が高い上に動悸、息切れ、めまい、頭重感、
 肩こり、不眠によい。

  麝香(ジャコウ)、人参(ニンジン)、牛黄(ゴオウ)、
  蟾酥(センソ)、熊胆(ユウタン)、レイ羊角(レイヨウカク)、
  サフラン 、沈香(ジンコウ)、真珠(シンジュ)、d-ボルネオール







 三黄丸  
  コレステロール量対リン脂質量を正常に改善
  気分が落ち着かず、興奮気味で、鼻血出血したり顔面紅潮、充血型の者が対象
  高血圧症、耳鳴、肩こり、眩うん
  ダイオウ、オウレン、オウゴン
 八味地黄丸 
 一般的に年を重ねるといろいろな部位が弱ってくる。その弱った機能を補い元気にする。
 足腰の痛みやしびれ、腎機能低下にともなう夜間頻尿、性機能低下、乾燥肌のカユミや湿疹など
 また、そのような症状をともなう前立腺肥大症や糖尿病
   地黄(ジオウ)      ジオウの根茎で、「補腎」・「精血を養う」
   山茱萸(サンシュユ)  滋養強壮作用
   山薬(サンヤク)     滋養強壮作用
   茯苓(ブクリョウ)     水分循環
   沢瀉(タクシャ)      水分循環
   牡丹皮(ボタンピ)    血行障害(瘀血)を改善
    +腎を温めて機能を高める
   桂皮(ケイヒ)      温中補陽
   附子(ブシ)       温脾腎散寒
 
 以下 なし