それから、約半年の後、ダグラスは職人通りから程近い、住宅街の外れに一軒の家を購入した。
そして、長年住み慣れた聖騎士のための寮を出て、生活の場をそちらに移すことにしたのだ。
それは、もちろん――。
「エリー、この部屋は、オマエの好きなように使え。――工房は、続けるんだろ?」
「うん! ありがとう、ダグラス!!」
元気で、幸せそうな2人の声が聞こえる。
アカデミー新設中の大図書館は、もうじき完成を迎える。
それが、完成すると同時に、エリーはダグラスを結婚することに決まっていた。
次期、アカデミー校長は、イングリド先生に決まり、ヘルミーナ先生は、アニスと共に南の国へと向かうことに決めたようだった。
そして、それを受けて、イングリド新アカデミー校長は、教師増員のために、工房を1人で続けるか、それともまた旅に出ようかと考えていたマリーを、来年度から教師として迎えることに決めた。
今は、それぞれがその準備中。
結婚式は、アニスが国に帰る前。
彼女とサイード、そして、ヘルミーナ先生にも、どうしても出席してもらいたかったから。
「ね? 式にはね? マリーさんと、アニス、アイゼル、ノルディスに――、飛翔亭の皆でしょ? あと、イングリド先生、ヘルミーナ先生、それから――。」
「ああ、いいから好きに呼べ。 ……どうせ、こっちは仕事関係ですげえ沢山呼ぶ羽目になるんだから。」
「そう? じゃあ、あと、ね? 今から招待状書きたい人もいるんだけど……。」
「あ? 今から? 早くねえか?」
「ううん、遠いから――。……あの、リリーさんと、その旦那様と……、それに、シュワルベさん。」
「……リリーさんと、ウルリッヒさんはいいとして、シュワルベはどこにいるかわからねえだろ?」
「ううん。マリーさんが、たまに連絡つけてるみたい。」
「……そっか、じゃあ、好きにしろ。」
「うん!」
シュワルベは、自らの宣言どおり、傷が治った後すぐ、ザールブルグから姿を消した。
ただ、出て行くときにマリーに見つかって、不定期でいいから連絡をいれろと約束をさせられたらしかった。
「マリーさん、自分だってしなかったくせにね?」
言いながら、クスクス笑うエリーにつられて、ダグラスも笑う。
幸せだ。
本当に、2人はこれ以上ないくらいの幸せを感じていた。
お互いの存在が、そこにあるだけで嬉しい。
ただ、声が聞けて、笑いあえて。
そんな、何気ないことが、とても幸せ。
もう、二度と会えないのではないかと思ったときもあった。
こんな日を迎えられるなんて、あの時は思いもしなかった。
あの時の祈り。
こうして、相手に、伝えられることの喜び。
ともに、過ごす日々の幸せ。
伝えたい。
いつでも、どこでだって。
だって――。
自分は、こんなにも……。
「エリー。」
「何? ダグラス。」
「愛してるぜ。」
「――ダグラス!?」
部屋の中で、ガタガタと家具とか、器具とかを動かして整理していたエリーに、ダグラスがいきなりそう言ってきて、エリーはさすがに驚いて慌てた声を出した。
「エリーは?」
ニッと笑いながら、答えを求めてくるダグラスを、エリーは赤くなった顔で睨みつける。
「ん?」
「〜〜〜〜〜〜〜〜///」
促すダグラスの笑顔が、エリーの大好きな顔で、「反則だ〜!!」と心の中で悪態をつきながらも、エリーは観念したように、息を吐いた。
辺りがどれほどの闇に包まれようと、エリーにとっては決して見えなくなることなどないだろう、光。
エリーの、何より、一番大切な、ひと。
「……大好き。」
そうエリーが告げた後のダグラスの顔が、本当に嬉しそうで、幸せそうで。
エリーもまた、幸せな笑顔を浮かべたのだった――。
【END】
(06.01.28)
…終わり、ました…。
当初考えていたよりも、遥かに長くなってしまい、おまけに途中でスランプに陥り、
更新が停滞したりと、楽しみに読んで下さっていた方には、本当にご迷惑ばかりおかけした作品となってしまいました。
しかし、無事ここに完結させることができ、真田は自分なりに満足の気持ちでいっぱいです。
ここまでお付き合い下さった皆様。本当に、ありがとうございました。
いかがでしたでしょうか…?
もし、よろしければ、下の一言感想、選択式になっていますので、ちょっと押していって下されば幸いです。
よろしくお願いします。
それでは、本当に、ありがとうございましたm(__)m
一言感想
《39》 長編top
挿絵描いてくれる方大募集〜\(^0^)/
お気に入りのシーンをあなたの1コマで飾って見ませんか?
…いえ、冗談です(半分本気ですが…)(;^_^A
真田が描くと、このページの背景絵で精一杯…(汗)
背景絵、気に入ってくださいましたら、どうかお持ち帰りしてやってください(^^)
文字なし 文字有り